表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/565

第185話 久しぶりの夜会で③

※暴力描写が出てきます。ご注意下さい。

 ダリアからの脅しで爵位の差を持ち出され、青ざめるカトレア。

 それを見て、調子に乗ったダリアは周囲を一瞥すると親友の耳元に囁く。



「それに、あなたが大声を上げたせいで、この場に集まっている貴族達の視線が一気にこちらに向いたわ」

「え、えぇ、そうね」



(そんなの、私が大声を上げた時点で分かっていたわよ。貴族達の好奇な視線が)


 引き攣ったような笑みを浮かべるカトレアに、笑みを深めたダリアがとどめを刺す。



「そうよね。だったら今、私があなたに冤罪を着せた場合、周りの貴族達は『稀代の天才魔法師』であるあなたと『宰相家令嬢』である私、一体どちらの言葉を信じるかしら?」

「っ!?」



(私は子爵令嬢で、あちらは公爵令嬢。その上、あちらは宰相家令嬢。爵位からして圧倒的にあちらの方が上)



「……分かったわ」

「カトレア」



(本当は、こんな女にあげたくない。でも……)


 ラピスが心配そうに見つめる中、悔しそうに小さく下唇を噛んで俯いたカトレアは、ダリアから少しだけ距離を取ると、母から貰った大事なネックレスを外す。

 そして、そのままダリアに差し出した。



「……あげるわ」

「まぁあ、良いの!?」



 声を上げて大袈裟に喜ぶダリアに、顔を上げたカトレアは無理矢理淑女の笑みを浮かべる。



「えぇ、あなたが欲しいって言うのなら」

「ウフフッ! ありがとう、カトレア! とっても嬉しいわ~!」

「くっ!」



(お母様、ごめんなさい)


 嬉しそうにカトレアの手元からネックレスを奪うダリアに、カトレアは悔しさのあまり顔を歪ませる。

 そんな彼女を見て、優越感を感じたダリアは侍女にネックレスをつけてもらうと、大層嬉しそうな顔でネックレスをつけた姿をカトレアに見せつける。



「やっぱり、このネックレス、美しくて可愛い私に似合っているわ~! そう思わない? カ・ト・レ・ア♪」

「……えぇ、そうね。本当に、似合っているわ」



 ぎこちない笑みで褒めるカトレアに、加虐心がそそられたダリアは再びカトレアに近づくとそっと耳元に顔を近づける。



「さすが私の親友ね。そういうところ、大好きよ」

「…………」

「でもね」



 蔑んだ笑みを浮かべたダリアは、指に嵌っていた魔法式が刻まれた指輪に自分の魔力を込める。

 そして、真っ赤なハイヒールを履いた足に強化魔法をかけると、憂さ晴らしをするように目の前にいるカトレアを思いっきり蹴り飛ばす。



「うぐっ!」

「カトレア!!」



 ダリアから強く蹴られ、受け身が取れなかったカトレアの華奢な体を、少し後ろにいたラピスが慌てて抱き留める。




「貴様、カトレアに対なんてことをしてくれたんだ!!」



 婚約者を抱き留めたラピスが、ダリアを睨みつけて怒鳴り声を上げた瞬間、会場を華やかに彩っていた音楽が止まり、水を打ったように静けさが会場を包み込む。

 すると、酷く不機嫌そうな顔をしたダリアが、ラピスに向かって小さく鼻を鳴らす。



「フン! そんなの、調子に乗っている子爵令嬢に罰を与えたのよ」

「罰って……」



(お前は、カトレアの親友じゃなかったのかよ)


 ダリアの言い分を聞いて、カトレアとラピスが揃って困惑していると、ダリアが持っていた扇子でカトレアを指す。



「そもそも、いくら今夜の主役が私の親友だからって、公爵令嬢であり宰相家令嬢である私より目立つなんてありえない!!」

「「えっ?」」



((一体、何を言っているのだろう(かしら)?))


 ダリアの言っていることが分からず、夜会の主役がますます困惑すると、顔を顰めたメストが2人を庇うようにダリアの前に現れる。



「ダリア、お前は本当に何を言って……」



 その瞬間、眉を吊り上げたダリアがメストの顔を見ると怒鳴り声を上げる。



「侯爵家次男の分際で、公の場で私を呼び捨てにしないで!! 私は、この国の宰相家令嬢なのよ!! 恥を知りなさい!!」

「っ!」



(ダリア、お前は本当に俺の婚約者なのか?)


 婚約者の名前を口にしただけで、公衆の面前で婚約者から叱られたメストは、茫然とした表情でダリアを見つめる。

 そんな彼に興味が失せたのか、小さく鼻を鳴らしたダリアは首にかかったラピスラズリのネックレスを愛おしく見つめる。



「それにしても、『何か物足りない』と思っていたらこれだったのね! フフッ、やっぱり美しくネックレスって、宰相家令嬢である私がつけるために存在するのよね~」

「ダリ、ア」



 蹴られた場所を手で押さえながら苦悶の表情をするカトレアを見て、更なる優越感に覚えたダリアは親友に向かって蔑みの笑みを浮かべながら忠告する。



「これに懲りたら、私より目立とうなんて二度と思わないでね」

「っ!」



(この子は、本当に何を言っているの?)



「それでは皆様、今宵の夜会、心ゆくまで楽しんでくださいましね」



 驚きのあまり言葉を失っている親友に向かって完璧な淑女の笑みを浮かべたダリアは、4人に向かって綺麗にカーテシーをすると、呆然とする婚約者を省みることもなく、いつの間にか賑わいを取り戻したホールの中へと消えた。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


2/12 大幅な修正をしました。よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ