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第167話 言えない真実

 カミルと合流してしばらく、ステインの手綱を引いているカミルの隣を歩いていたメストは、ルベルから預かった言伝を思い出す。



「あっ! そう言えば、カミルへの言伝を預かっていた!」

「言伝、ですか?」



(もしかして、カトレアからの罵詈雑言が籠った言伝を預かったのかしら?)


 蔑んだ目で見つめてきたカトレアを思い出し、穏やかだった気持ちが急に冷えたカミルが思わず身構えると、メストは預かった言伝をそのままカミルに伝える。



「宮廷魔法師団長殿が、カミルに『魔物討伐に協力してくれてありがとう。そして、うちの宮廷魔法師が本当にすまなかった』と」

「そう、でしたか」



 ルベルから預かった言伝を聞いて、カミルの冷たく凍った気持ちがほんの少しだけ温かくなる。


(まさか、宮廷魔法師団団長のルベル様からだったとは。それにしても、平民に対してお礼と謝罪をされるなんて……この国にも、メスト様と同じくらい平民に対して紳士的な方がまだいらっしゃったのね)


 けれど、『うちの宮廷魔法師が本当にすまなかった』という言葉で、蔑んだ目で見つめてきたカトレアを再び思い出したカミルは、思わず握っていた手綱に力を入れると堪らず空を見上げる。



「それにしても、この国の稀代の天才魔法師様は、平民に対して容赦が無いのですね」

「まぁ、そう、だな」



(なにせ、カトレア嬢のご実家は、貴族の中でも人一倍プライドが高い家で有名な家だ。加えて、カトレア嬢自身、貴族であることと『稀代の天才魔法師』と呼ばれていることに誰よりも誇りを持っている。だから、魔法をまともに扱えない平民に対して容赦が無いのだと思う)


 

「とはいえ、王都で騎士が平民に対して剣を向けているので今更だと思いますが」

「っ!? それも、そうだな……」



 悔しそうに顔を顰めるメストの隣で、カミルは久しぶりに会った親友のことを思い返す。


(それにしても、誰かを蔑む顔をしたカトレア、久しぶりに見たわ)



「本当、久しぶりに」

「カミル?」

「……いえ、何でもありません」



(忘れよう、他人のことなんか)


 不思議そうに小首を傾げるメストに、小さく首を横に振ったカミルはふと、今のカトレアが『稀代の天才魔法師』を名乗っていることが気になった。



「そう言えば、あの方が『稀代の天才魔法師』なのですよね?」

「そうだが?」

「ならば、あの方は魔法師としてそれなりに優秀な方ですよね?」



(例えば、全属性の魔法が使うことが出来るとか)


 

「そうだな。確か、貴族しか通うことが許されない魔法学園に入学する前、火属性の上級魔法を会得したそうだ」

「火属性の上級魔法を?」



(違う。飛び級で学園することになった彼女が、入学前に会得した魔法は火魔法の上級魔法ではなく、()()()()()()()()だったはず)


 その時、カミルの脳裏に先程のカトレアの会話が蘇る。



『あなた様は『稀代の天才魔法師』と言われている人物なのですよね?』

『えぇ、そうよ。それがどうしたの?』

『それなら、火属性以外の属性魔法を使えるのではないのですか?』

『はぁ!? 何を言っているの!? 『王国一の主砲』と謳われるティブリー家に生まれたこの私が、火魔法以外の属性魔法を使えるわけが無いでしょ!?』

『そう、ですか』



(そうだったわ、彼女は自分が火属性以外の魔法を使えることを知らなかった……いや、()()()()()()()のよね。彼女の親友を騙っている()()()()()()()()()のせいで)


 悔しさを堪えるように手綱を強く握るカミル。

 そんなカミルからの問いに、メストは小さく頷く。



「あぁ、そして学園卒業時に火属性の超級魔法を会得した彼女は魔法師としてのずば抜けた能力に加え、貴族令嬢として優秀なダリアの唯一無二の親友ということで、宮廷魔法師団に入団するのと同時に『稀代の天才魔法師』という2つ名を賜ったそうだ」

「つまり、魔法師として有能で尚且つあなた様の婚約者の親友だから、その2つ名を賜ったと?」

「そういうことだ」



 メストの話を聞いて、カミルは僅かに苦い顔をする。


(私は色々あって学園には通えなかったけど、学園卒業時に火属性の超級魔法を会得しているのはスゴイと思う。それでも、私は知っている。その2つ名に()()()()()()()魔法師の実力を。それにしても……)



「それにしても、あなた様の婚約者様が貴族令嬢として有能なのですね」

「まぁ……そう、だな」



 気まずそうに視線を逸らすメストに、更に苦い顔をしたカミルは悔しさを押し殺すように手綱をきつく握る。


 王都で仕事をしている時、カミルはド派手なドレスに身を包み、数十人の侍女を引き連れて歩くダリアを何度か見たことがあった。

 そして、婚約者がいるにも関わらず、数人の貴族令息と仲睦まじく歩いているところも見かけていた。


(貴族として大層恥知らずな女性が貴族の中で優秀とは……この国の品格も随分落ちたものね)



「いや、随分()()()()()()()ものね」



(誰のお陰で国が維持出来ているかも知らずに)


 メストにも聞こえない小声で呟いたカミルの淡い緑色の瞳には、憎しみの感情が宿っていた。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


2/12 大幅な修正をしました。よろしくお願いいたします。


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