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第163話 彼のところに戻る

 ルベルに怒られて落ち込んでいるカトレアを見て、メストは思わず苦笑する。



「まぁ、カトレア嬢が言いたいことも分かります。騎士が平民と馴れ馴れしくするなんて、この国の貴族の考え方に当てはめればありえませんよね」



(そう、この国の貴族は平民と違って自由に魔法が使えるせいか、なぜか選民思想が高い。そのせいで、カトレア嬢のように魔法がろくに使えない平民を貴族達はこぞって見下す。俺としては、魔法が使えないだけでなぜ貴族が平民を見下すのか全く理解出来ないが)


 すると、急に元気になったカトレアがメストに詰め寄る。



「そうですよね!? 平民風情が騎士と親しくなろうなんて、身の程知らずにもほどがありますよね!?」

「カトレア、お前は少し黙っとけ」

「……はい」



 再び落ち込むカトレアに、再び苦笑いを浮かべたメストはルベルに視線を戻す。



「ですが私の場合、彼の回避技に惚れて、その回避技を会得しようと彼と知り合いに……というより、彼に弟子入りしたのです」

「ほう、平民の回避技に惚れて、それを会得しようとわざわざ平民に弟子入りしたのか」

「そうです」



(近衛騎士が平民に弟子入りとは……あの平民、よほどいい動きをするのだな)


 実は、カトレア達のところに駆けつけた時、ルベルは僅かだがカミルの後ろ姿を見ていた。


(貴族令嬢と見間違うくらい華奢だったが、近衛騎士が弟子入りする程だ。是非とも見てみたい……いや、手合わせしてみたいものだ)


 メストの話を聞いて、ルベルが平民に対して興味を抱いていると、ルベルの隣で話を聞いていたカトレアが不機嫌そうに鼻を鳴らす。



「フン! 平民の回避技なんて、所詮は走って逃げるだけのみすぼらしいものでしょ?」

「カトレア。お前、いい加減にしろよ。俺は、お前が平民に対して魔法を放ったことを許したわけじゃないからな」

「っ!?……申し訳ございません」



 肩を落としながら俯くカトレアを見て、カミルに魔法を放った直後の青ざめた表情を思い出したメストは、複雑な感情を抱きつつ再びルベルに視線を戻す。



「とはいえ、彼は騎士……というか、貴族のことが心底嫌いなのです。かく言う私も、彼と親しくなれたのもここ最近なので」

「そうか」



 メストからカミルのことを聞いたルベルは、静かに顎に片手を添えると頭を回す。


(今までの話を鑑みるに、メスト君の知り合いである平民は、平民とは思えないレイピアを扱いに長けて回避技も優れている。そんな彼が、カトレアの火球が直撃する直前、レイピアに透明な魔力を纏わせた。その直後、火球が消えて彼を無傷だった。となると、彼がレイピアに纏わせた透明な魔力が彼を火球から守ったのだろう)



「だとしたら、こちらの方も彼に関しての情報があってもおかしくないはず」

「「ルベル団長?」」



(そもそも、透明な魔力を扱う平民なんて聞いたことがない。とすると、誰かが故意的に情報を止めているのか。まぁ、貴族が大半を占めるうちならありえそうだな)


 

 メストと共に首を傾げるカトレアを見て、小さく溜息をついたルベルは首を横に振るとメストに微笑みかける。



「いや、何でもない。ともかく、メスト君。休日にも関わらず、魔物討伐の応援に来てくれてありがとう。君とその平民のお陰で、規模の割には早く討伐が完了した」

「フン! どうせ、メスト様だけ活躍されたと思いますが」

「カトレア」

「……はい、黙ります」



 ルベルの威圧に負けたカトレアが大人しくなると、それを見ていたメストは笑みを浮かべると小さく首を横に振る。



「いえ。私はただ、騎士としての務めを果たしただけですので」



 穏やかな笑みで謙遜するメストに、ルベルは申し訳なさそうに笑みを浮かべると横で落ち込んでいるカトレアに鋭い目を向ける。



「カトレア。戻ったら、分かっているよな」

「……分かっています」



 ルベルの怖い顔と、酷く落ち込んでいる顔で俯いているカトレアを見て、『王都に戻ったら、カトレアから詳しい経緯について聞くのだろう』と思ったメストはカトレアに視線を向ける。



「カトレア嬢、最後に1つだけ聞いていいか?」

「はい、何でしょうか?」

「本当に、故意的に魔法を撃ったんじゃないんだよな?」



 その瞬間、落ち込んで俯いていたカトレアが顔を上げて肯定する。



「もちろんです! いくら、魔物が跋扈する場所に平民がいるからって、人間相手に故意的に魔法を撃つなんて愚かなことは、この国を守る宮廷魔法師の肩書にかけて絶対にしていません!!」

「……そうか、分かった」




(カトレア嬢の真剣な表情を見る限り、本当にしていないんだろう。だとしたら、一体誰がカトレア嬢に魔法を撃つように仕向けたんだ?)


 『本気でやっていない!』と訴えるカトレアの訴えかけるような目を見て、少しだけ目を伏せたメストは拳に力を入れる。

 すると、横で見ていたルベルがカトレアの肩に手を置くとメストに目を向ける。



「それじゃあ、俺たちは戻るが……メスト君はどうする?」

「私は……彼のところに戻ります」


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


2/12 大幅な修正をしました。よろしくお願いいたします

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