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第159話 赤の他人

「いきなり、何を言って……」

「あなた方に、ここは魔物が跋扈した場所なのかもしれません。ですが、この場所は本来、動植物が静かに暮らす場所です。それを、人間の……それも、魔法が使えるごく一部の人間の行いで無くすのは出来るだけやめてください」

「っ!?」



(確かに、そうかもしれないわ……でも!!)


 カミルの理想論とも呼べる正論を言われ、悔しさで頭に血が上ったカトレアはカミルに食ってかかる。



「魔物は、生きとし生けるものの魔力を無差別に全て奪う! だから私は、森に魔物がいたら容赦無く火属性魔法を放つ! 『森に気を遣え』なんて国民を守る宮廷魔法師である私の仕事には関係無いわ!」



(私は、由緒ある火属性魔法使いであるティブリー家に生まれた者で、この国で『稀代の天才魔法師』と呼ばれる者! だから、森だろうとも魔物がいれば幼い頃から鍛えていた火属性魔法で焼き尽くす!)


 カミルのお願いを真っ向から叩き潰したカトレアは、怒りで顔を真っ赤にするとカミルに向かって指を差す。



「それに、あんた! それが、魔物から救ってやった人にかける言葉なの! これだから平民は……」

「カトレア嬢!!」

「はっ!」



(私、今、平民に罵詈雑言を浴びせようとした?)


 メストから怒鳴られるように名前を呼ばれ、ハッとしたカトレアは申し訳なさで顔を歪ませるとそっぽを向いて謝る。


 

「ごめんなさい。少し、言い過ぎたわ」

「いえ、こちらこそ平民の分際で、宮廷魔法師様に対して無茶苦茶なことを言ってしまい申し訳ございませんでした」



(この森のことを知っているからって言って、国のために魔物と戦った人にケチをつけるようなことを言うべきはなかったわね)


 頭を下げず謝るカトレアと、深々と頭を下げてカミル。


 そんな2人を近くで見ていたメストはホッと安堵の溜息をつく。


(カミルが珍しく無茶苦茶なこと言って、宮廷魔法師として誇り高いカトレア嬢が怒る気持ちは少しだけ分かる。俺だって、同じことを言われたら怒りを覚えるかもしれない。だが、さすがに言い過ぎだ)


 そっぽを向いたままのカトレアにメストが鋭い視線を向けると、頭を上げたカミルがカトレアに目を向ける。



「あの、つかぬことを伺いますが、よろしいでしょうか?」

「良いわよ、特別に答えてあげる」

「カトレア嬢!」

「ありがとうございます」



 メストから諫められたカトレアに、カミルは無表情のまま静かに問い質す。


 

「あなた様は『稀代の天才魔法師』と言われている人物なのですよね?」

「えぇ、そうよ。それがどうしたの?」



(というか、どうしてそんなことを平民如きが知っているの?)


 内心疑問を覚えつつ、毅然とした態度で答えるカトレアを見て、カミルは沸き上がってきた怒りを抑えるように拳を強く握るとある可能性を聞く。



「それなら、()()()()()()()()()()()使()()()のではないのですか?」



(もし……万に1つでも、今のあなたが魔法師として有能だった兄を『師匠』と慕っているのなら、火属性以外の属性魔法が使えるはず)


 僅かな期待を込めて聞いたカミルだったが、一瞬驚いた顔したカトレアが再び怒りを露わにしたことであっさりと打ち砕かれる。



「はぁ!? 何を言っているの!? 『王国一の主砲』と謳われるティブリー家に生まれたこの私が、()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()でしょ!?」

「そう、ですか」



(()()()()、そうよね。そうなると、兄のことを覚えていないわよね)



「じゃないと、その2つ名を堂々と受け取っていないから」



 『平民に侮辱された』と勘違いして激怒するカトレアを見て、誰にも聞こえない小声で呟いたカミルは、握っていた手を静かに開くと僅かに肩を落として悲しげな目を向ける。


 すると、カミルの脳裏に在りし日の記憶が蘇る。



『師匠、私に風属性魔法を教えてください!』

『だから、僕のことを『師匠』と呼ぶなと……その前に、火属性の弱点属性である水属性の初級魔法は習得出来たのですか?』

『うぐっ! それはまだ……』



(幼い頃、うちの屋敷へ遊びに来たカトレアは、兄を見つけると一直線に兄のところに走っていき、面倒くさそうな顔をしている兄に対して必死に教えを乞いていた。そんな勉強熱心だったカトレアが今は……)



「ねぇ、何か言った?」

「いえ、何も。それでは失礼致します」



(分かっていたじゃない。私に向かって魔法を放ったのは、()()()()()()()()()()()じゃなくて、メスト様と同じ、顔が瓜二つの()()()()だってことを)


 こみ上げてくる泣きたい気持ちをアイマスクの下に隠したカミルは、メストとカトレアに深々と頭を下げると今度こそ夜の森の中へと入って行った。


 カトレア達の遥か後ろにいた、()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()一瞥して。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


2/12 大幅な修正をしました。よろしくお願いいたします。


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