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閑話 私の小間使い(前編)

※カトレア視点です。

 それは、魔物討伐前に宮廷魔法師団内で行われた会議で、乱入してきたダリアが大事な会議を滅茶苦茶する前の日のことだった。



 コンコンコン



「どうぞ」

「失礼致します」



 執務室のドアを静かに開けたのは、私の小間使いである魔法師見習いのテオである。

 本来、団長や副団長以外の宮廷魔法師に専属の小間使いは就かず、各小隊に1人小間使いとして魔法師見習いが就く。

 だが、私には自分専用の執務室があるため、特別に専属の小間使いが就いている。

 それが、テオ。

 彼は魔法師見習いの証である黒ローブを身に纏い、ローブについているフードを深く被っている。

 そして、目元の部分だけをくり抜いた真っ白な仮面をいつもつけている。

 そのため、彼の素顔を全く見たことがない。

 そして、仮面で表情が一切見えないから、彼が一体何を考えているのかよく分からない。

 でも、与えられた仕事を淡々とこなしているから、実はとても頼りにしている。



「カトレア様、これが先日の魔物討伐で出現した魔物の数と種類です」

「ありがとう」



 私のところに来て書類を渡したテオは、机の上にあった空のティーカップを下げた。

 そしてそのまま、部屋の奥にある簡単なキッチンに持っていくと、紅茶の準備をし始めた。


 本当、気の回る小間使いでありがたいわ。


 テオの大きな背中を見て小さく笑みを零すと、渡された書類に目を通した。





「どうぞ」

「ありがとう」



 書類に目を通し終えた私は、運ばれてきたティーカップに口をつけて一息ついた。


 相変わらず、テオが淹れてくれるお茶は美味しいわね。


 美味しい紅茶にありつけた私は、ふと私の仕事の邪魔にならない範囲で部屋の掃除をしているテオのことを聞いてみたくなった。



「テオっていくつなの?」

「言わないとダメですか?」



 淡々と答えつつも掃除の手を止めないテオに、私は少しだけ顔を顰めた。



「別に。ただ、見た感じ私よりテオの方が年上なのかなって」

「……そういうことでしたら、カトレア様のご想像にお任せします」

「分かったわ」



 本当、相変わらず素っ気ないわね。

 まぁ、こうしてちゃんとしてくれているから良いんだけど。


 小さく溜息をついた私は、テオ以外この部屋にいないことを良いことに行儀悪く頬杖をついた。



「そう言えば、どうして魔法師になろうと思ったの?」

「たまたまお貴族様と同等の魔力があったので、無理矢理」



 まぁ、そうよね。

 ペトロート王国では貴族と同等の魔力を持っている平民に対し、『保護』という名目で強引に宮廷魔法師団に魔法師見習いとして入れさせるのよね。

 でもまぁ、平民出身の魔法師見習いが、正式な宮廷魔法師になることは一生無いんだけど。



「ちなみに、得意な属性魔法とかあるの?」

「一応、風属性が得意です。とは言っても、初級魔法しか使えませんが」

「そうなのね」



 淡々と手を動かしていたテオは、机の近くに落ちていた書類を拾い上げると、そのまま私に渡した。



「カトレア様、書類が落ちていましたよ」

「ありがとう」

「いえ、これも仕事のうちですから」



 落ちていた書類を受け取った私は、書類を元の場所に戻すと再びティーカップに口をつけた。



「そう言えば、テオの淹れる紅茶って美味しいわよね。どこかで教わったの?」

「はい、見習い魔法師になるにあたって一通り教わりました」

「そうだったのね」



 それにしてはやけに淹れ方が上手いわ。

 うちの実家にいる侍女が淹れる紅茶とあまり変わらない気がする。



「カトレア様、どうされました?」

「いえ、何でもないわ」



 首を傾げているテオに、私は小さく首を横に振った。

 すると、彼がいつもつけている仮面が何故だか気になった。



「ねぇ、聞いてもいい?」

「答えられるものであらば」



 白い仮面で顔を覆っているテオは、くり抜かれている目元の部分から銀色の冷たい瞳で主である私のことを真っ直ぐ見つめた。

 そんな彼の瞳に、私は一瞬口を噤むとゆっくりと口を開いた。



「どうして、いつも仮面をしているの?」


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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