教えてユニィ先生 vol.3
忘れた頃のまさかの続編。
本編170話辺りに対応したお話です。
https://ncode.syosetu.com/n1546hj/178/
因みに、比較に用いられている第1回の授業。
https://ncode.syosetu.com/n0984hl/1/
光を――
光を――感じる。
微睡みの中から。徐々に意識が浮き上がる――と同時。
スパーン!!
僕の背中に。
驚くほどの大きな音と――その音からは想像できない程の軽い衝撃が加わった。
僕は、驚愕のあまりに立ち上がろうとして、その拍子に机と椅子をガタンと――いやいや。
机と椅子なんてこの場所にあるわけがない。
ユニィがハリセンなんて持っている訳がない。
だから――この光景も。
瓦解していく討伐隊も。ソニアが叫んだその言葉も――全ては。
全ては夢なんだ。
『夢なら――覚めろっ!』
心の底から叫ぶ。
その叫びに応えるかのように――
スパーン!!
頭の天辺に軽い衝撃が走った。
『ユニィ先生。ごめんなさい』
「分かれば良いんですよ。リーフェ君」
ハリセンを持ったまま頷くユニィ先生と、怒られる生徒の僕。
これは――久々だけどアレだね。
僕は色々と察した。そして――即座に思考を切り替える。
これは、日頃疑問に思っていることを解決するチャンスだ。
そう――チャンスなのだ。
それに――気のせいかもしれないけど、過去の記憶を見て以降、頭の回転が早くなった気がする。
今の僕なら、ユニィ先生の授業にもついていけるはずだ。
だから――
『先生! 早速だけど。僕、一つ不思議に思っていることがあるんです』
思わず手を上げる。
「何かな? リーフェ君」
『あの――この前、魔物達に襲われた時なんですけど。水があんまり出て来なかったんです。おかしいですよね? 以前ユニィ先生も言ってたじゃないですか。「水がどんどん加速して落ちていく」って』
僕の質問を聞いた途端。
ユニィ先生は――目を閉じて首を左右に振った。
溜息まで吐いている。
なんだろう――まさか。今さら、違うとでもいうのだろうか。
僕の顔に疑問符が張り付いていたのだろう。
それを見た先生が補足してくれた。
「リーフェ君。私以前の講義で言いましたよね? 「普通は穴の位置に対する水面の高さで水の速度が決まるんです」って。ゲートは、ポケットだけで使うのとは違って、穴を開けているのと同じことが起こってるんですよ」
『うん。ちゃんと覚えてるよ。だから、ゲートの入口は深い海の中に開けて――』
「――限界があるんですよ。いつまでもどこまでも落ちていける亜空間と違って。海の深さだって、せいぜい1000mとか2000mでしょう? だとすると、せいぜい落下速度は200m/s。亜空間の中に、たかだか100秒落ちるだけでもこの5倍は早くなるんです」
――ううっ。
頭が痛い。そろそろ僕の頭の方が限界のようだ。
早く話を終わらせよう。
『そっか――それなら、少し待ってポケットを使った方が良かったのかな?』
「ええ。そうね。水の勢いだけで、敵は全滅してたでしょうね。敵は」
ユニィ先生が右手のハリセンを左手に持ちながら、僕に笑いかけてくる。
でも――何だろう。先生の言葉に少し含みを感じた。
――まぁ、良いか。
とにかく。
細かいことは気にしないことにした。
夢から覚めて。
後日、ステュクスにこの話をした。
『ほう。お前の契約者は学者なのか』
何だか話が大きくなった。
※本物語はフィクションです。
※重力加速度へのツッコミは(以下略)