教えてユニィ先生 vol.1
本編32話に関するお話です。
https://ncode.syosetu.com/n1546hj/33/
その日もいつもと同じように微睡んでいた。
そう。微睡んでいたはずなんだけど――
気付くと、何故かユニィが目の前にいた。
――でも、あれれ?
なんか変だよ?
「今日はリーフェ君に物理学の講義を行います」
――え? 君は誰? ユニィはそんな難しそうなこと言わないよ?
僕の疑問を無視して講義は続く――
『はい! ユニィ先生!』
いつの間にか、僕は生徒になっていた。
『あんな小さな穴で沼の水が数分で抜けるとか、絶対おかしいと思うんです!』
何だか、そういう光景を見たことあるような気がする。
池の底からお宝とか自転車とか出てくるやつだ。水を抜くのに何時間とか掛かっていた――と思う。
――ん? 自転車ってなんだっけ?
「ああ」
ユニィ(?)先生がにこりと笑う。
「普通の穴だったらそうかもしれませんね」
「簡単に言うと、普通は穴の位置に対する水面の高さで水の速度が決まるんです。いわゆるエネルギー保存則なんですけど――感覚的に言うと、水の深いところだと、水圧が高いでしょ? だから出る水の勢いも強い。まぁ、そう憶えておけば間違いではないですよ」
――ヤバいよ。
何を言っているか分からないよ。
「そういうことで、水が減れば減るほど水は抜けにくくなるんです」
どういうことでも良いから早く帰ってきて、ユニィ。
早くしないと、僕の頭の中が水圧で破裂しそうだよ。
「でもね――」
『でも?』
「ポケットの中はね――」
『ポケットの中は?』
僕はついつい釣られて聞き返してしまう。
「物質の状態が固定されてしまうのです! しかも、外側の部分と繋がった状態を維持したまま――」
維持したまま?
「だから!」
僕はビクッとなる。驚かさないでよ。
「ポケットの中に落ちていったものは、外側の物体を引っ張りながら加速して落ちていくのです!」
あれ? なんかおかしいぞ。
『先生。ポケットの中に入ったら、出てくるときの速度も同じになるんじゃないの?』
ユニィ(?)先生はまたにこりと笑う。
「それは、全体が完全に入った時の速度が維持されるんですよ! つまり! つながっている間はどんどん加速して落ちていくということです!」
な、なんだってー!?
――まったく意味が分かんないよ!!
「まぁ、そういうことなので、落ち続ける水はどんどん加速して穴の中に水を引っ張り込むんです。1秒後には長さ4.9m分、10秒後には長さ490m分、100秒後には長さ49000m――まぁ、ここまでくると、直径20cmの穴でも小さな沼が干上がる程の水が落ちているでしょうね」
『あー! ほんとだ! スゴイやユニィ先生!!』
とりあえず、そう言っておいた。
――もちろん夢だった。
後でユニィに『ユニィ先生!』って言ったら、変な顔された。
※本物語はフィクションです。
※重力加速度へのツッコミはそもそも論です。胸の中に大切に仕舞っておきましょう。




