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Ep.3-53

「それより、はやく始めよう。そして私と彼らに聞かせておくれ――君の出した答えを」


にやにやと笑いながらエリオスはファレロ王にそう促した。笑っている——なのに、その顔はファレロ王に有無を言わせない一種の圧が滲んでいた。

ファレロ王は、ちらと自分の背後に控える貴族たちの顔を見渡す。彼らは王の視線が自分たちに向けられているのに気づくと、無言でその背中を押すように深く頷いて見せた。

そんな彼らを見て、ファレロ王は改めてエリオスに向き直り、重々しく頷いた。


「では——」


ファレロ王はゆったりと歩みを進め、テラスの手すりに震える手を置いて、眼下の民を一人ひとり舐めるように見渡した。

広場の人々からはどよめきが生まれる。国王が——マラカルド3世が出てくるのだとばかり思っていたのに、第一王子が出てきた、それも国王としての装いで。驚くのも無理はなかろうというものだ。

そんなざわめきの中、ファレロ王はしかつめらしい顔で右手を上げる。これは、先王マラカルド3世が臣民に向けて演説する際に行っていた静粛を求める合図だった。

しかし、ざわめきはとどまることを知らず、その様に泣き出す赤子の声なども鳴り響き、嵐のような様になっていた。

そんな眼下の様子にファレロ王の額には一条の汗が流れた。


「——うるさいなぁ」


エリオスがぽつりと呟いたのが耳に届いた途端、ファレロ王は思わず息を呑んだ。


「——ッ! 静まれェ!!」


ファレロ王がそう叫ぶのと同時に、人々のどよめきは水を打ったように鎮まる。沈黙に包まれた広場には、いくらかの赤子の泣き声だけが響いていた。

ファレロ王は息を荒くさせていたが、二度ほど深く息を吸ってから平静を取り戻す。そして、体面を整えるかのように軽く咳ばらいをすると改めて眼下の民たちを見下ろしながら口を開く。


「――親愛なる臣民諸君。まずは、この場に私が立っている理由について説明させていただこう」


そう言ってファレロ王は昨晩エリオスたちに玉座の間で語り聞かせたのとほとんど同じような説明を滔々と、むせ返るほど情感たっぷりに口にした。その間も臣民たちのさざ波のような困惑の声が響いていたが、ファレロ王はそれを顧みるでもなく説明を続けた。


「このような緊急の事態につき、正当な王位継承手続きや国民への周知などがなされていない状態ではあったが、第一王子である私が緊急的に王座に就くこととなった。まずこの事実を諸君らには承知しておいていただきたい」


ファレロ王はそんな言葉で、自身が王位を継承することになった経緯を臣民に語り聞かせた。

ファレロ王の言葉に、ある者は先王マラカルド三世の死を嘆き、ある者はファレロ王の言葉に困惑を覗かせ、ある者はこの後の自分たちの運命を悲観したような顔をしていた。

そんな彼らにファレロ王は滔々と言葉を続ける。


「——その上で、私はここにいるエリオス・カルヴェリウス殿と、このレブランクの国王の名において和解することとした。我が弟のルカント、そして先王の乱行について、慈悲深くもカルヴェリウス殿は、ある条件を飲むことで我が国から手を引くと約束して下さった。ついては、その和解の条件として——」



ファレロ王は一旦そこで言葉を切り、ちらとテラスに居並ぶ者たちの顔を見渡した。その顔はどこか強張っているようにも見えた。

そしてファレロ王は改めて民へと向き直る。そして一瞬引き攣った笑みを浮かべて彼らに告げる。


「悪いが諸君らには死んでもらうこととなった」

あと何話でエピソード3を終わらせられるのかしら……などと少し不安になっております。

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