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Ep.3-46

久々にエリオス登場です。マラカルド王とファレロのターンが長くなりすぎました……

「待たせるねえ」


荘厳な王城の中にあって、ひときわ豪華絢爛な空間――玉座の間の中央で、腕を組みながら小さくため息をつく黒装の少年、エリオス・カルヴェリウスはちらりと周りを見渡す。鎧を身に纏った騎士、華美な軍服を身に纏った儀仗兵、豪奢なガウンとそれぞれの爵位を示す色とりどりのマントを身に付けた貴族たち、ドレスに身を包んだ王族の姫君たち――皆一様に緊張した面持ちでエリオスを見ていたが、彼と視線が合いそうになると、ふと視線を逸らす。

そんな彼らをみながら、エリオスはくつくつと苦笑を漏らす。


「嫌われてるなあ――酷いと思わない?」


そう言って、エリオスは背後に控える少女・シャールにわざとらしく悲しんだような表情を貼り付けて問いかける。対するシャールはそんな彼とは一切視線を合わせることなく、苛立ったような声を漏らす。


「別に、順当な扱いだと思いますけど。というか、嫌われてるどころじゃないんじゃないですか?」


「え、何それ怖い」


凍り付いたような表情のシャールに対して、エリオスはからからと笑う。

敵地の只中、武装した騎士たちに囲まれているというのに、エリオスはそんなことは微塵も気にしていないかのようにいつも通り飄々と振舞う。


エリオスが王城の中に通されたのは時間にして一時間ほど前。直前まで殺し合い――尤も、一方的なエリオスによる殺戮に終始していたのだが――していた相手から、突如「王城に招きたい」「王に謁見してもらいたい」という申出を受けた時には、流石にエリオスも一瞬困惑していたが、エリオスはさしたる躊躇いもなくその提案を受け入れた。

本人曰く、「別にいつでも皆殺しに出来るしね」ということだった。

それからしばらくの間は、「王の準備が整うまでお待ちください」と言われて、豪奢なサロン室にて茶を振舞われていたのだった。

そこからの数十分間は、シャールにとっては気の休まることの無い時間だった。

王城には、ルカントたちに連れられて一度だけ来たことがあった。あの時も、城のメイドや貴族たちから汚らわしいモノをみるような侮蔑の目で見られていたが、今回はそれよりももっと異質な悪意を帯びた視線――ありていに言えば、憎悪の目で見られていたように感じる。

尤も今の自分の状況を考えてみれば、それは致し方のないことだろうとシャールは自分に言い聞かせていた。今の自分は、彼らから見れば仕えるべき主人(ルカント)を殺した相手に下り、祖国に牙を剥いた生き汚い不忠者でしかないのだ。石を投げられたり、矢を射かけられないだけマシというものだろう。

こと玉座の間に至っても、未だにシャールに注がれる視線は憎悪に満ちている。ひそひそと、シャールのコトを指さしながら悪し様に語り合う者たちもいる。針のむしろ――そんな言葉がぴったりの状況だった。


「これが落とし前――貴方が私に与える罰ですか?」


シャールはぽつりとエリオスに問いかける。その言葉を零した彼女の唇は酷く震えていた――それが恐怖ゆえか、絶望からか、或いは自分を取り巻く者たちすべてに対する怒り故か、シャールには判じることが出来なかった。

エリオスは、そんなシャールをちらと振り返りながら、微かに笑う。


「まあ、そうだね。尤もまだ前座にすぎないけど――おっと?」


「こ、国王陛下の御成りです」


儀仗兵の一人が、震える声でそう告げた。

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