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大罪踏破のピカレスク~人間に絶望したので、女神から授かった能力で誰よりも悪役らしく生きていきます  作者: 鎖比羅千里
Episode.1 The fate of people who Enter into the palace of Villain...
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Ep.1-7

評価、ブックマーク等下さった方ありがとうございます。励みになります……!

玩弄するような視線を投げかけるエリオスに、アグナッツォは舐めるような視線を向けて、口の端を吊り上げながら問いかける。


「ハン、なら何故名乗りを求めたんですかい? 偉大なるカルヴェリウス卿?」


煽り、と見せかけて相手の懐を探る。しかし、そんな彼の問いかけをエリオスは歯牙にもかけない。呵々と笑いながら答える。


「なに、様式美というやつだよ。客人に礼節のあることを示す機会を与えるのも主人の務めというもの――ま、残念ながらその甲斐なし、という感じだったけど。はは」


朗々と自虐を交えて笑うエリオスにアグナッツォは表情を歪める。挑発で相手のペースは少しでも乱させようとした彼の試みは超然とした彼の前ではむしろ自分たちの卑小さを感じさせる結果となってしまう。

そんな彼らの反応などまるで見えていないかのように、エリオスは話を進める。


「さ、話を戻そう。一国の王子が何の御用かな? 一夜の宿なら貸し付けてやっても構わんよ―――まあ、まだ昼なんだけど」


「――ベルカ公国からお前の討伐依頼を受けてきた」


エリオスの戯言に触れることもなくルカントは単刀直入に告げる。

本来であれば、油断を誘いアグナッツォに暗殺を仕掛けさせたり、リリスに大魔術の詠唱の準備をさせたり、不意打ちをしたりと様々な手を講じるつもりであった。

しかしルカントは直感的に察していた。目の前の魔術師にそんな搦手は通用しない、と。


リリスの言を信じればエリオスは既存の魔術体系とは次元の異なる技術を行使している。ということは相手の行動に予測が立たない。

相手の手の内や挙動が予測不可能である以上、相手の動きを先読みしての搦手は無意味。


「――! はは、素直なことだな。王子殿下」


ルカントの策の甲斐があってか、エリオスはわずかに驚きを表情に表す。しかし、それは渦に巻き込まれて水底に沈む水泡のようにすぐに見えなくなり、彼の顔には再び愉快そうな笑みが戻って来る。


「へえ、そうか。ベルカ公国が‥‥‥しかし‥‥‥はてさて、私なにかやったかなぁ? 公国に睨まれるようなことなど‥‥‥」


「お前を連行しに来た騎士と魔術師の惨殺、挙句その首を公国に送り付けた―――討伐依頼が出されるには十分だろう」


とぼけるエリオスに、ルカントは訥々とその罪状を告げる。


「――ああ! これか!」


何か思いだしたようにポンと手を叩いたエリオスは、指を鳴らして乾いた音を響かせる。

その途端、ルカントたちの目の前に何か巨大な塊のようなものが、どしゃっという音を立てて落ちてきた。


「――ッ!?」


「ひっ――」


リリスとミリア、シャールは小さく悲鳴を漏らし、ルカントとアグナッツォはそれが何か分かった瞬間に怒りと驚愕に表情を歪ませる。

――それは肉の塊。尊厳もなく、区別もなく、こねくり回され固められ、誰が誰とも分からなくなった骸。その骸が巨大な肉の球体(ボール)となって落ちてきたのだ。


「う、ぐ……ぷ! うぇ……うぅぅ」


思わずシャールはその場で吐き出してしまう。

しかし、先ほどと違って誰もシャールの粗相を責め立てようとしはない。皆、目の前の凄惨な人の行いとも思えない所業に、言葉を失っていた。そんな彼らを前にエリオスは頭を掻きながら、眉の端を小さく動かして遺憾の意をわずかに浮かべながら床を見る。


「あ――しまった。床を汚してしまった。私としたことが‥‥‥怒られる、かな?」

エグめの悪役らしくなって参りました……年齢区分大丈夫だよな……?


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