Ep.3-38
昨日に引き続き、めちゃめちゃ遅れました。
申し訳ありません。画面の前で土下座しております
ふいにエリオスの背後から、シャールが彼の袖を引いた。にまにまと笑いながら振り返ったエリオスを、シャールは思い切り睨みつける。
「貴方は……私にどうしろというんです——!」
他の誰かに聞こえることのないほど静かに——それでいてその容姿からは想像できないほどに重く強い語気でシャールはエリオスに問う。
唇を震わせる彼女を見ながら、エリオスはくすりと笑った。
「何、この国を滅ぼすにあたって君にはひとつ落とし前をつけてもらおうかと思ってね」
「おとし……まえ?」
「そ、お・と・し・ま・え——」
兵士たちに背を向けて甚振るような視線をシャールに向けたエリオス。そんな隙を兵士たちはめざとく攻め立てる
「放てェ!」
騎士の誰かが甲高い声で叫んだ。
その瞬間、一斉に雨のように矢が放たれて、シャールとエリオスの頭上に降り注ぐ。
二人に矢が到達するのには一瞬しか要しない。しかし、その一瞬というラグはエリオスという敵を前にしては致命的であった。
「『踏破するは怠惰の罪――私の罪は全てを屠る』」
エリオスはにやりと口の端を吊り上げながら、兵士たちの方を振り返った。その瞬間エリオスたちを包み込むように、黒い空間の裂け目がぱっくりと現れた。エリオスたちに向かって降り注いだ矢は、そのことごとくがその闇の奥へと消えていく。
「――人が誰かと話しているときに、横やりだなんて不躾だな」
わざとらしく頬を膨らませてエリオスはそう言った。しかし、その瞳には変わらず嗜虐的な光が躍っている。エリオスは、兵士たちを見遣り、シャールに背を向けたまま、彼女に先ほどの話の続きをする。
「落とし前――まあ、君は一応私に剣を向けてくれちゃったわけだし。ほら、そういうのはやっぱり、清算しておかないとなって思ってさ。だから――」
エリオスが言葉を言い切る前に、広場の兵士たちはいっせいにエリオスに攻めかかった。剣が、槍が、戦斧がエリオスたちに殺到する。しかし、エリオスはそんな彼らを歯牙にもかけずに言葉を続ける。
「君には、この国が死に絶える様の――見届け人になってもらおうかと思ってね」
エリオスはそう言って、ぱちんと指を鳴らす。
その瞬間、王都の西方から飛び去ったはずの焔の竜、その一匹が飛来した。石造りの建物も、大地も、大気も振動させるような咆哮が響き渡る。
竜は翼を大きく羽ばたかせ、ひときわ高く飛び上がったかと思うと、一息に広場の石畳すれすれまで急降下して、エリオスたちを取り囲んでいた兵士たちを薙ぎ払い、その炎の身体で飲み込んでいく。竜が通り過ぎた後には、元はエリオスたちを取り囲んでいた兵士であったのだろうと推測することしかできない炭と灰の塊だけが残る。
一回り、二回り――広場を飛び回ると焔の竜は再び王都の西方へと飛び去って行った。
後に残ったのは、ぼろぼろになった消し炭と、焔と、そして断末魔の残響だけだった。そんな地獄のような惨状の中心で、エリオスはその余韻に浸りながら、立ちすくむシャールに手を差し伸べた。
「さて、栄華を極めた一つの国が終わるところを、一緒に見ようじゃないか――きっと楽しいよ」
子どもが友達を遊びに誘うような無邪気な笑みで、エリオスはそう言った
総PV数が5万を越えました!
皆さまありがとうございます!
徐々に暑くなってきていますが、皆さん体調にはお気をつけて。私はバテかけております笑




