Ep.3-32
ストックが死んでいる……
エリオスが千を越える王国兵を鏖殺し、アリキーノを地に沈めてから時間にすれば10分ほど——エリオスとアリア、そしてシャールは広間に集まっていた。
少し前まで、骨肉の島々が浮いた血の大洋の様相を呈していた広間はいつの間にかすっかりと片付けられていて、僅かに床板に血の色が染みているように見えなくも無い——と言うくらいには、広間からは惨劇の跡は消し去られていた。
エリオスは悠々と広間を突っ切ると、ゆったりと自身の紫檀の玉座に腰を下ろす。
艶めく服は、先ほどまでの残酷劇を繰り広げていた時から着替えたようで、血の一滴すらついていない。
アリキーノにつけられたはずの傷さえも、いつの間にか消えていた。
「――さてと。アリアとシャールにはまずお礼を……私の身繕いの時間を稼いでくれたからね」
悠然と足を組んで、頭を下げることもなくエリオスはそう言った。
そんな彼をアリアはどこか呆れた表情で、シャールは険しい表情で見つめていた。そんな二人に苦笑を漏らしながら、エリオスは小さく笑った。
「さて――今後のコトだけど。私、レブランク王国を滅ぼしてこようかと思ってさ」
「――!」
シャールは表情を強張らせた。
正直なところ、予想はしていた。ルカントたちによる襲撃と、アリキーノたちによる討伐・捕縛計画――都合、レブランク王国は2度もエリオスに喧嘩を売って、敗北したことになる。しかも、後者に至っては、ルカントたちによる成り行き的な襲撃とは異なり、王が命じた国家的な計画だ。
しかも、貪欲として悪名を馳せるレブランク国王のコト――後々兵力を整えてまた襲撃をしてこないとも限らない。
何より、「奪うのなら、それ以上を奪われる覚悟をするべき」と言ってはばからないエリオスのことだ。その債務の回収に容赦などは存在しないだろう。
――賛同はできないが、理解はできる。だからこそ、シャールは何も言うことが出来なかった。
「レブランクは大国よ? さすがのアンタでもちょっと骨なんじゃない?」
アリアが腕を組みながら、かつかつとエリオスの隣へと歩み寄る。傷だらけの身体ではあるが、ぼろぼろだったネグリジェは脱いで、ワインレッドのシンプルなドレスに身を包んでいる。
そんなアリアを見ながら、エリオスは首をゆるゆると振る。
「ま、それは私にも考えがあるのでね——ま、結果をご覧じろってやつさ」
ニマニマと笑いながら、エリオスはそう言った。そんな彼の答えに、アリアは小さくため息をつく。
「——あっそ。それで? 決行はいつかしら?」
「今夜」
「——あんたねぇ……」
あまりにもあっさりと返したエリオスに、流石のアリアも酷く呆れた顔を晒す。
まるで、ちょっと酒場に顔を出すかのようなノリで国を滅ぼしにいくと宣うエリオスの思考は、もはやシャールの理解の範疇を超えていた。
呆けた2人の顔に苦笑を浮かべながら、エリオスは肩肘をついてから、悪戯っぽく目を細める。
「で、大陸随一の国を滅ぼすのに際して、ちょっと君らにも手伝ってもらいたいな———ってね」
もしかしたら、後々このパート以降は章を再編するかもです。ちょっとepisode3のナンバリングが嵩んでいるので……
その際にはご理解の程よろしくお願いします。
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