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Ep.7-70

ちょっと展開に詰まって少しサイレントでお休みをいただいていました。

再開します。

エリシアたちがサルマンガルドと対峙するその頃、城壁の外――大平原での戦いも動き始めていた。

時間はほんの少し前にさかのぼり、サルマンガルドとエリシアたちが交戦し始める前、アコール城の大尖塔からモルゴースの手によって紫雷が放たれたことによって、それまでの戦況は大きく変わった。

それまでは、ユーラリアたちが命がけで上げた士気とザロアスタたちによる特攻、そして本陣からのレイチェルによる指揮によって、概ね聖教国軍の攻勢という形で戦況は展開していた。

魔王軍は尖兵である魔獣たちやサルマンガルドが遠隔召喚した不死者たちでもって応戦していたが、どちらかといえば防戦一方という状態だった。

それでも無尽蔵に繰り出されるサルマンガルドの軍団は、いつまでたっても聖教国軍の先陣が城門前の本陣へ到達するのを阻み続けていた。彼らだけでなく魔獣の軍団も、その痛みも死も恐れない猛攻ぶりで、聖教国軍の進軍を押しとどめている。

結果、聖教国軍は攻勢を維持しつつも、全体としての戦況はこう着状態という域を出なかった。

だが、それ自体は指揮官たるレイチェルからすれば、特に問題視するような状況ではなかった。なぜなら、この戦いの最大の目的は魔王モルゴースの撃破であり、それがなされれば敵の戦陣は自動的に瓦解する――ゆえに、レイチェルとしてはこの一種の拮抗状態を維持していればそれでよく、ユーラリアたちがモルゴースを撃破した後に魔王軍を速やかに投降させるに足る戦力を温存しておくことだけが目標だった。

その目標は、難なく達成できるものであるように見えた。

しかし、その一種の均衡がモルゴースの魔術によって破壊された。

モルゴースの放った二筋の紫電――聖教国軍の大軍勢の中心に落ちたそれは、大地を大きく穿つとともに、地を走りすさまじい勢いで兵士や騎士たちを焼き払っていった。


「――ッ!」


その様を後方の本陣で目の当たりにしたレイチェルは思わず絶句した。

圧倒的な勢いで敵陣を突破せんとしていた騎馬兵たちも、雄たけびを上げて突っ込もうとしていた兵士たちも、皆一様に真っ黒に焦げた炭と化していた。

各部隊には複数人の魔術師を防御魔術の展開のために同行させていたはずだが、モルゴースの超遠隔攻撃魔術を前にしては意味を為さなかったようで――その地獄のような惨状は一気に前線の兵士たちを恐怖の底へと叩き込む。

一瞬にして激減した戦力、挫かれる戦意、乱れる隊列。モルゴースの攻撃は、硬直し一時の均整を得た戦場に混沌をもたらした。

レイチェルは歯を噛み締めて、遥か遠方にそびえるアコール城の大尖塔を強く睨みつけた。

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