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Ep.7-67

「――は?」


サルマンガルドは呆れたような声を上げる。ふざけているのか? 正気か? そんな言葉がすぐにでも飛び出てきそうな声だったが、それに対してエリシアはいたって真面目な表情で続ける。


「だから、ね。ボクは君のことが気になって仕方ない! だって我らが偉大なる神サマに、一人選ばれて呪われるとか何をやらかしたらそうなるのか気になるし、不死の呪いって言うのがどういうものなのかも気になる。死霊術に手を染めた経緯も気になるし、モルゴースに従うようになった理由も気になる。ね、リリス。君もそう思わない?」


まくしたてるようなエリシアの言葉に、リリスは呆気にとられた様子でぽかんと口を開ける。しかしすぐに正体をとりもどして、無言でこくこくと頷く。

そんな彼女の言葉に、サルマンガルドは明らかに不愉快そうに鼻を鳴らす。そしてそれからあからさまな深いため息とともに口を開く。


「——知的な遊戯としての問答は僕も嫌いではないが、それでは単なる自分語りにしかなるまい。そして、僕にはそこまでお前たちに自分の事情を開陳する理由などありはしない」


「ま、そういう反応になるよねぇ。でもほら、リリスがせっかく君の出した謎かけに答えたんだもの。その報酬くらいあって然るべきだと思わない?」


そんなエリシアの切り返しにサルマンガルドは僅かに答えにつまる。それから少し考え込んで、小さく鼻を鳴らす。


「確かに一理あるだろう。だが、あの程度の問答に答えただけでは、お前の問いの全てに応えるには足らん。それならばせめてお前たちにとって、もっとも価値のある問いに応えよう」


「それは——?」


リリスが問うと、サルマンガルドは仮面の向こう側で目を細めて笑う。


「僕が我が主人に——魔王モルゴースに従う理由だよ」


「それがボクらにとってもっとも価値のあるモノなわけ?」


エリシアは明らかに不服そうな表情を浮かべる。しかし、サルマンガルドはそんな彼女の反応に肩を竦めながら続ける。


「僕はあの強さに従っているのではない。王としての姿勢に従っているのでもない。軍事力でも魔術の巧みさでも聖剣の威光でも弁舌の技巧でも財力でもない——あの魔王の目的、野心に一枚噛むことが僕の宿願を果たす唯一の道となるからだ」


「宿願——」


「もう分かっているのだろう、ヴァイストの使い手よ。ふん、古今東西に伝播する不死者の物語の例に漏れることなく、この僕も同じ望みを抱いている。すなわち——」


そう言ってサルマンガルドはゆったりと両手を広げ、その掌を天へとかざす。それはまるで、空をつかみ引き摺り下ろさんとするかのようにも見えた。

息を呑むエリシアとリリスをよそに、天を睨みながらサルマンガルドは宣う。


「この神による呪いの破却——この呪いからの解放だ」

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