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Ep.7-66

乾いた拍手の音が鳴り響く。

節くれだった右手とほっそりとした左手を打ち合わせながらサルマンガルドは無表情に手を叩き、リリスを見つめていた。


「――正解だ。リリス・アルカディス」


「……でも、そんなことが……あるはずありませんわ……」


サルマンガルドの称賛の言葉に対してリリスはゆるゆると首を横に振る。

自分の導き出した冒涜的な答えに震えるほどの恐ろしさを感じていたから。しかしそんなリリスにサルマンガルドは皮肉っぽい声で語りかける。


「あるはずない? はは、何を馬鹿なことを。自分で導き出した答えをそう卑下するものではない。なにより、それしかないと自分で確信を持ったからその答えを口にしたのだろう?」


「だって――神が……最高神が呪いだなんて……いいえ、いいえ。そもそも貴方の言葉が全て虚構である可能性だって――!」


そうだ。ここまでの推論は全てサルマンガルドの口からもたらされた情報に基づいて論理を構築しただけのものにすぎない。彼の言葉が虚構であるのなら――


「そんなことをしてまで僕に何の利益がある? 君たちの戦意を挫くという効果はあるかもしれないが、そんなことのためにここまで込み入った虚構を作り上げるほど僕は器用じゃない」


「でも――!」


「ねえサルマンガルド、ひとつボクからもいいかな?」


冷静さを徐々に失いつつあったリリスの言葉を遮るようにして、エリシアが一歩前に進み出てサルマンガルドと相対する。彼の方はあからさまに気分が盛り下がったような仕草を見せる。そんな彼の態度に苦笑を漏らしながら、エリシアは言葉を続ける。


「別にボクはそこまで信心深いわけじゃあないからね。彼女なんかは天帝に疑念を向けること自体にためらいを覚えているみたいだけど――誰が君に不死の呪いをかけたかなんていうのは、ボクとしてはどうでもいい話だ」


エリシアは口の端に皮肉っぽい笑みを浮かべながらそう言い切る。その言葉に、サルマンガルドはあからさまに不愉快そうな鼻を鳴らす。

そんな彼の態度の変遷を気に留めることもなく、エリシアはさらに続ける。


「それは君の不死性がどういう性質のものかっていう話についてもそうだ。君がたとえ本当に『死』の無い存在だったとしても、あるいは何らかの方法で終わりを与えられる存在だったとしても、ボクとしてはどうでもいい。だって、ボクらの目標としては君を殺すことじゃなくて負かすこと。魔王との戦いで横槍を入れられないようにすることだからね」


「だったらどうだというのだ、ヴァイストの使い手。おしゃべりはここでやめて、また殺し合うか?」


サルマンガルドは明らかに不機嫌そうな声で、エリシアにそう問いかけた。しかし、エリシアはゆるゆると首を横に振る。そして、へらっとした笑みを浮かべて肩を竦める。


「そうしたいのはやまやまなんだけどね。でも、ボク気になっちゃってしょうがないんだよね。君のことが——最高神に呪われるなんて、一体どんな存在なのかってね」

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