Ep.3-17
「レブランクを滅ぼす――本気で言っているのですか? たった一人で、大国を滅ぼせるとでも?」
アリキーノの表情に緊張が走った。対するエリオスは、そんな彼の顔を悠然と眺めながらくつくつと笑う。
「あくまでたとえ話さ――私が領地や貴族の地位が欲しいと思うのならっていう仮定の話。別に私はそんなもの欲しくは無いし、あったって邪魔なだけだ。そもそもレブランクほどの大国、滅ぼすのは少し面倒だからね」
エリオスはそう言い捨てる。
シャールにはどこまでエリオスの言葉が本心なのか分からなかった。レブランク――自身の祖国を、もしかしたらこの男は本当に滅ぼしてしまうのかもしれない。そんな焦燥じみた緊張感が奔った。
それは、アリキーノ以下兵士たちも同じようで、広間の中にはどよめきが生まれる。しかし、アリキーノは表情を引きつらせながらも、再び口の端を吊り上げる。
「そうですか――では、爵位も領地もいらないというのなら、他に欲しいものは? 貴方が我が国に協力してくれるのなら、出来得る限りの財を我が王は貴方に下賜されるでしょう」
「へえ、なら――君たちの王家が建国の時代から保管し続けてきたというアレはどうかな?」
その言葉に、アリキーノは表情をこれまで見たこともないほどに歪める。そして、強く歯噛みしてエリオスを睨みつけて、怒鳴りつける。
「馬鹿な! そんな、アレを渡せるわけがないだろう! いや、なにより――何故貴様、アレが我が国にあることを――」
「へえ、やっぱり。あるんだ、レブランクに……アレが」
「――ッ!」
エリオスの言葉に、アリキーノは思わず口元を抑える。これまでに見たこともないほどのアリキーノの狼狽ぶりに、シャールも、そして彼の部下たちも動揺を隠せない。一体「アレ」とは何なのか――おそらくそれを知っているのはこの場では、エリオスとアリキーノ、そしてアリキーノの反応に何の違和感も示さず、ただ冷ややかな笑みをたたえたアリアだけなのだろう。
アリキーノは、荒れた息を整えながらぎろりとエリオスたちを睨みつける。
「そうか、そうですか――なるほど、貴方達の目的はつまり……であれば、貴方達に譲歩した交渉はもはや不要でしょう」
アリキーノは、そう言うと剣を抜く。そんな彼に合わせて、彼の部下たちもそれぞれの武器をエリオスたちに向ける。そんなアリキーノたちに、エリオスは変わらずおどけた表情を浮かべて笑う。
「おや、もう一つ手段が残っているんじゃなかったのかい? それは試さないのかな」
「いえいえ、これから試すのですよ。即ち、貴方を半殺しにして王国まで引っ立てる――私が大嫌いな『力ずく』ってやつですよ」
腹立たし気に低くうなるような声でアリキーノはそう返した。その言葉に、エリオスはにんまりと笑って見せる。
「いいね、それじゃあこっちも楽しく対抗させてもらおう――私の大好きな『皆殺し』ってやつさ」
今更ですが、【鎖比羅千里】名義のTwitterアカウントを動かし始めました。連載開始前に作ってはいたんですけどね、リツイートといいねしかしてなかったのです……
宣伝2割、趣味8割なアカウントではございますが、Picrewさんのメーカーを使ったりして、本作キャラクターたちのビジュアルを作ってみたりしたので、ちょっと覗いてみていただけると嬉しいです。
なろうの規約的にTwitterのアカウントのリンクを貼っていいのか分からないので、見たい方はお手数ですが作者名、あるいは作品名(たぶん「大罪踏破」とかだけで出てくる気がします)で検索等かけていただければ……
最後になりますが、拙作をお気に召していただけた方は評価・ブックマーク等していただけますとモチベが爆上がりします。
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