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Ep.7-60

エリオスがナズグマールに牙を剥いたその頃、サルマンガルドと激突したエリシアとリリスの戦いも、いっそう激しさを増していた。

エリシアの聖剣から放たれる炎は絶え間なく、執拗にサルマンガルドを飲み込もうと食らいつくが、サルマンガルドは多彩な魔術を行使してその攻撃を打ち払う。そして隙を見つけてはエリシアに致命の魔術を叩きこもうとするが、そのほとんどは彼女に届くことは無く、リリスの魔術によって無効化される。

一進一退の戦いが続く中、サルマンガルドは二人から大きく距離をとるとため息交じりの声を漏らす。


「……面倒な」


おおきくかぶりをふるサルマンガルドに対して、エリシアとリリスはそれぞれに一瞬顔を見合わせると、示し合わせたように炎と魔術を交互に繰り出していく。竜巻のような猛攻がサルマンガルドを包み込む。

しかし、サルマンガルドはその野暮ったい格好からは想像がつかないほどに流麗に、まるで水の流れのようにそれらの攻撃を避けていく。

次々に自分に襲い掛かって来る必殺級の連撃をいなし、躱しながらサルマンガルドは小さく舌打ちをする。


「そもそも僕は研究者であって、こういう血気盛んなお遊びは苦手なんだが」


「そうだろうね――!」


肩をすくめるサルマンガルドに向けて、エリシアは渾身の力で聖剣を縦一文字に振り下ろす。その瞬間、切っ先が描く軌跡が炎を帯びた斬撃となって、一直線にサルマンガルドの下へと迫る。

サルマンガルドはその攻撃に焦ることもなく防御魔術を展開させるべく片手をかざす。しかし、次の瞬間彼の視界は迫る炎の斬撃ではなく空を仰いでいた。


「なに――?」


思わず声が漏れる。それと同時に、サルマンガルドは自分の足に絡みつく冷たく重い感触に気が付いて表情を歪ませる。それは、ユーラリアが展開させて残していった聖剣の権能によって形作られた鎖。もはや神の威光は失われ、ただ形だけが残されたものでしかないはずなのに、その鎖は未だにサルマンガルドをその場に縛り付けるには十分な重みを帯びていた。

サルマンガルドはその鎖からわずかに漏れ出る魔力を感知して、何が起きているのかを察する。


「――魔女、お前の仕業か」


「ご明察、ですわ」


もはや鉄くず以下のガラクタ、あるいは抜け殻に過ぎないものとサルマンガルドが侮っていたユーラリアの残した鎖。そこにリリスが魔術を施したことにより、抜け殻は鎖としての最低限以上の強度を取り戻したのだ。それだけでなく、そこに残された魔術的な情報を基に、リリスはその鎖を操りサルマンガルドの足を絡めとって見せたのだ。

しかも、この二人は鎖の動きをサルマンガルドに怪しまれることのないように、あえて鎖はほとんど動かさずに、鎖の残骸たちが残るところへとサルマンガルドを誘い込んだ。二人が目を見合わせてからのあの間断の無い連撃によって。


「腹立たしいな。まったく――」


サルマンガルドは相変わらず感情の抑揚のない声のままにそう漏らした。

そんな彼に向かってエリシアは不敵に笑う。


「火葬される準備はできているかい?」


次の瞬間、焔の斬撃は大きく弾けて高く黒い煙をあげながら弾けた。

最近投稿が少し不定期になってしまって申し訳ありません。

繁忙期は明けたのですが、少しリアルの関係(人間関係的な)で、いろいろと小説を書いていられる状況でない日が続いています。ですので、大変申し訳ありませんが、1週間ほどお休みをいただきます。

正直なところ、1週間経って状況が好転しているとも思えないのですが、とりあえずその間にストックだけ貯めておければと思っております。連載再開は、5月16日を予定しております。

申し訳ありませんが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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