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Ep.7-50

「——ッ!」


サルマンガルドは咄嗟のことに驚きの声を上げ、反射的に後退る。迫る炎の聖剣に向けて腕を伸ばし、睨みつける。


「鎖よ……!」


サルマンガルドの声に応えるように、周囲の鎖の全てがその矛先をユーラリアたちからエリシアに変えて、一斉に襲い掛かる。

しかし、その鎖はエリシアの身体に突き立てられるどころか、触れることすらできずに弾かれる。それはまさに、先程ユーラリアが展開した鎖をサルマンガルド自身が防いだときのような有様で、透明な壁がエリシアの全身を囲っているように見えた。

その光景にサルマンガルドは思わず息を呑み、それから視線の先を瞬時に周囲に巡らせる。そして彼は気が付いた。彼の攻撃を阻んだ者――エリシアに守りの魔術をかけるリリスの姿に。


「――ッ!」


サルマンガルドは直ちに、攻撃の矛先をリリスへと切り替えようとする。しかし、彼にそんな猶予が与えられるはずもない。エリシアの剣が目前に迫っているのだから。

サルマンガルドはそのことに気が付くと、鎖を操りエリシアと自分の間に幾重にも張り巡らせ、彼女との距離をとる。しかし、エリシアは目の前に蜘蛛の巣のように渡り、剣戟を阻まんとする鎖たちを打ち払い、断ち切っていく。

彼女を阻む鎖は、もはやユーラリアからの魔力の供給を絶たれ、もはや崩壊を待つだけの代物、そんなものが炎の聖剣の剣戟を止めることはおろか遅らせることもできはしない。

じりじりと追い詰められるサルマンガルド。


「――盾よ……!」


いよいよサルマンガルドは鎖を操り自身を守護せしめるのを放棄して、両手を突き出して守護呪文を展開する。そんな彼に向けてエリシアは炎を帯びた聖剣の斬撃を叩き込む。


「――っぐぅぅッ!?」


サルマンガルドが展開していた守護魔術は不完全な状態で、エリシアの渾身の剣戟を受け止めたからか、すさまじい勢いで吹き飛ばされて周囲の区画の大理石の壁に激突する。それでも、不完全ながらに守護魔術は彼の身体をエリシアの刃から守れたらしく、彼の身体には傷一つついてはいなかった。


「――そう簡単にはいかないよねえ」


エリシアが苦笑交じりに、低い声でそう自嘲して握ったヴァイストを肩に軽く載せる。彼女の視線の先では、よろよろと立ち上がるサルマンガルドの姿。リリスも、杖を構えたまま警戒の視線を彼に向けている。流石に三卿と謳われた魔術師にして不死者、この程度の衝撃で動けなるなんてことはありえないわけで。

エリシアは戦闘態勢を維持したまま、ちらとユーラリアやシャールたちの方を見る。


「さ、彼はボクらに任せて君らは先に」


「彼を倒したら、すぐに後を追いますわ。私たちが追い付くまで、大手柄はとっておいてくださいましね?」


エリシアに続けてリリスも薄っすらと笑いながら、視線をサルマンガルドから離すことなくそう言った。そんな二人の姿にシャールはどうしたものかとわずかに逡巡するが、ゆったりと頷き先へと進むユーラリアと踵を返すエリオスを見て、すぐに走り出す。

それからすぐに振り返り、二人に向かって叫ぶ。


「――二人とも……よろしくお願いします!」


それからシャールは踵を返してユーラリアとエリオスの後を追う。そんな彼女の姿をエリシアとリリスは嬉しそうに見送った。

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