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Ep.7-49

鎖の渦に巻かれるサルマンガルドの横をシャールはユーラリアの後を追って駆け抜ける。何がなにやら分からない状況でシャールは混乱するが、それでもユーラリアについていかなくてはという認識だけは彼女に焼き付いていた。

ちらと振り返るとサルマンガルドを包み込む鎖の渦はどんどんと小さくなっていく。このままいけば、あのすさまじい速度と硬度の竜巻にサルマンガルドの身体は、切り刻まれ磨り潰されることになるだろう。いくら不死者といえど、そうなってしまえばどうしようもない。

しかし――


「下らん――それが貴様の策か」


前を向こうと思ったと同時に、鎖の暴風の向こうからそんな声が微かに聞こえた気がしてシャールは思わず息を呑む。

次の瞬間、すさまじい衝撃波が背後から襲い掛かってきた。それはシャールの背中を強く打つと同時に、彼女の軽い身体を宙に浮かべる。彼女の前を走っていたユーラリアやエリオスも同様に前方へと吹き飛ばされる。転がるようにして地面に落下した三人。シャールは何が起きたのかと、後ろを振り返る。


「全く腹立たしいな……僕を愚弄し侮ったこと以上に……その愚かさが……気分が悪くなりそうなくらいに」


彼女の視線の先では吹き飛ばされ、力を失い宙を舞い、そしていずれ落ちる鎖がカーテンのように広がっていた。そしてそれを背に、両腕を拡げた形でサルマンガルドが泰然と立っている。その姿からは傷を負ったような様子は一切見受けられない。

サルマンガルドは拡げた両手を天に掲げる。それからゆっくりと両手を眼前に下ろして、まるで照準を合わせるかのように広げた二つの掌でシャールたちを包み込むようにかざす。


「我が主には悪いが、貴様らはここで消しておくとしよう。不愉快だ――」


サルマンガルドがそう言った瞬間、彼の背後で力を失っていた鎖たちがふいに動きを止める。そして、それらは先ほどサルマンガルド自身にそうしたように、先端の楔をシャールやユーラリアたちの方へと向ける。


「――聖剣の権能で出来た鎖の支配権まで奪いますか……」


ユーラリアは苦笑交じりにその光景を見つめる。身体を強く打ったシャールたちはすぐさま逃げることもできず、エリオスも同様に『怠惰』の権能をすぐには展開できる様子ではない。彼は痛みに悶える身体を抱きながら、サルマンガルドを睨みつけている。

そんな彼らを見つめながらサルマンガルドは小さく鼻を鳴らす。


「消えろ――ッ!?」


今にも鎖に彼らを襲わせようとしていたサルマンガルドの全身が硬直する。


「待て、もう二人はどうした——」


そう言われて初めて、シャールは今サルマンガルドの横を抜けてきたのが自分とユーラリア、そしてエリオスの三人だけだと気がついた。

リリスとエリシアはどこに——

そう思った瞬間、鎖が編み上げた幕を赤い光が斬り裂く。


「——灼き尽くせ、ヴァイスト!」


そう叫びながら鎖の幕の向こうから現れたエリシアが、炎の聖剣をサルマンガルドに向けて振り下ろした。

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