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Ep.7-47

「ほう、来るか……」


苛立ちに任せて魔力を集束させるエリオスの姿に、サルマンガルドは淡々とした声でそう言った。エリオスの足元の影が蠢くと同時に、ゆらりと黒い槍が彼の足元から幾本も立ち上がる。そんな彼の権能の発動を見て、サルマンガルドは僅かに声に感情を乗せる。


「いいな……お前のそのチカラ……魔術的に非常に興味深い。聖剣とは異なる神なる力——何故そんなものをお前が……使えるのか」


「余裕ぶってくれるじゃないかサルマンガルド。私という脅威への恐れより先に知的好奇心が出てくるだなんて」


エリオスは相変わらずその顔に怒りの色を滲ませながらも表面上は笑っていた。そしてサルマンガルドの言葉に皮肉っぽくそう応える。しかし、サルマンガルドはふいにきょとんとしたような声を上げる。


「……僕とて、脅威が目の前にあるなら恐れもするだろうがね」


「——死ね」


エリオスは零すようにそう言うと、手を突き出して影の槍をサルマンガルドに向けて打ち込もうとする。しかし——


「そこまでです、エリオス・カルヴェリウス」


「——ッ!?」


サルマンガルドに迫っていたはずの影の槍が唐突に霧散した。突然のことにサルマンガルドも僅かに驚きの声を上げる。しかし、それ以上に動揺したのはエリオスだった。


「なんのつもりだ」


エリオスは首だけを後ろに向けて、低い声でそう問うた。

その身体には白金の鎖が絡みつき、指の一本すら動かせないほどに彼を拘束していた。

その鎖がどこから伸びているのかなど、確かめるまでもない。エリオスは肉食獣のような獰猛さを孕んだ眼光で鎖の主を見遣る。


「ユーラリア嬢、邪魔をする気かい?」


脅迫じみた声で問われたユーラリアは涼やかな顔で、ゆるゆると首を横に振る。そして、呆れたように目を細めて、エリオスに向かっていく。

そして、彼の背後に立つと彼のふくらはぎを目掛けて——


「えい」


「——ったぁ!?」


尖った金属製の軍靴で思い切り蹴り付けた。

その予想外の攻撃に、さすがのエリオスも意表を突かれたようで、なんの防御も覚悟もなくもろにダメージを食らってその場に崩れ落ちる。


「な、なんのつもりさユーラリア嬢!? こんな敵前で、私の邪魔をするばかりかこんな——」


エリオスが抗議の声を上げる中、ユーラリアがぱちんと指を鳴らすと、それに合わせるように彼の身体を搦めとる鎖がぎりぎりといっそうきつく締まる。

その痛みにエリオスは言葉を途切れさせて、苦悶の声を上げる。そんな彼を見下ろしながら、ユーラリアはため息をつく。


「邪魔をする気か——その問いに答えるべきは私ではなく貴方ですよ、エリオス・カルヴェリウス。貴方、私たちの邪魔をする気ですか?」

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