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Ep.7-46

解き放たれた極光にシャールは見覚えがあった。

極大消除魔術――最初に見たのは、エリオスの館に攻め込んできたレブランクの魔術兵たちがアリキーノ子爵の号令の下展開させてエリオスを殺そうとしたときに。そして、それをエリオスがアレンジしたものを軍艦の上で、サルマンガルドの軍が放った矢を迎撃したときに。

エリオスの『怠惰』の権能が極光を飲み込みシャールたちを守っているが、それでもその光の全てを飲み込めるわけもなくて、彼女たちの足下や髪の先のすれすれを全てを消し去る光が掠めていく。


「――ふん」


極光が解けるように消えた後、鼻を鳴らすようなサルマンガルドの声が響いた。

それと同時にエリオスは再び手刀で空を薙いで『怠惰』の権能を閉じる。そして腹立たし気な表情でサルマンガルドを睨みつけて、ゆるゆると首を振る。


「意趣返しのつもりかな……?」


「僕は言葉を弄ぶのは不得手なんだ。そして事実は僕自身よりもよっぽど雄弁だ」


サルマンガルドはそう言ってゆるゆると首を振る。そんな彼の態度にエリオスは忌々し気に舌打ちをする。彼の言いたいことが、彼の示したことの意味合いが分かっているから。

エリオスは、かつて自身の館を攻め込まれた際に見た極大消除魔術『太極接触・混沌原初』を見て、それをアレンジする形で『限局:太極接触・混沌原初』を編み出した。これは、複数人がかりでしか展開できないうえ魔力的な反動の大きいオリジナルを使いやすくするために生み出したアレンジだ。

逆に言えば、オリジナルはエリオスであっても使うことができない代物だ。消費する魔力量にしても、その制御にしても、反動にしても。

しかし、サルマンガルドが使ったのはオリジナル。それをなんのためらいもなく、反動すら感じさせないほどに平然とした様子で。

それは即ち、エリオスの先ほどの言葉への最も効果的な反論。自身を侮った彼への皮肉。


「数の差を気にされて手でも抜かれては僕としても面白くないからな……さて、どうだねエリオス・カルヴェリウス。これで僕が君たちを舐めてなどいないと分かってもらえたかな」


その言葉は言外に「舐めているのはお前たちの方だ」と言っているように聞こえた。エリオスは皮肉っぽい笑みを口の端に浮かべて、握りしめた拳を震わせる。

そんなエリオスから視線を外して、サルマンガルドはユーラリアの方を見遣る。


「さて、これで君たちは気兼ねなく僕と戦えるだろう? 必要なら死霊どもを呼び出してもいいが、既に戦場にも展開中だからな……今この状況で、君たちのためにわざわざここにも呼び出す必要性を感じられない」


サルマンガルドの言葉に、ユーラリアは目を細める。そんな彼女の横でエリオスは短い笑い声をあげる。


「随分と調子に乗ったことを言ってくれるじゃないかサルマンガルド。その言葉もはや飲み込めないからね?」


そう言った彼のこめかみには青筋が浮かんでいた。

今回でパート数が600になりました。当初の予定よりだいぶ伸びてしまっていますが、まだいくつかのエピソードを残しておりますので、どうぞお付き合いくださいませ。

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