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大罪踏破のピカレスク~人間に絶望したので、女神から授かった能力で誰よりも悪役らしく生きていきます  作者: 鎖比羅千里
Episode.1 The fate of people who Enter into the palace of Villain...
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Ep.1-4

薄暗い城の中を一行は進む。


罠や魔術・幻術の類に気を払いながらリリスやアグナッツォが先頭に立って進むが、城の中に入っても何も仕掛けの類は無い。拍子抜けと言えば拍子抜け――だが、逆にそれが逆に彼らの神経を過敏にし、そして疲弊させていく。

延々と変わり映えもなく続いていた廊下を10分ほど進んだところで、一行の目の前に巨大な扉が現れる。扉板には、精緻な装飾が刻まれている上、その周りにも不気味な彫刻がいくつも積み重なるように飾られている。

傍から見ても明らかに、この先の空間がこの城の中心であると分かる。


「――玉座の間ってところかしら? どういたします、ルカント様」


リリスはそう言って杖を構える。ミリアやアグナッツォ、そしてルカントも武器を構えて扉を睨みつける。シャールも構える武器はないながらに、彼らに倣い目だけは扉を睨んでみた。

ルカントが先陣を切って踏み込もうとしたその瞬間、大扉のドアノッカーがひとりでに動き出す。カラスの首を模したそれが硬い音が三度打ち鳴らすと、その音は屋敷全体に幾重にも響いた。

すると、重厚な大扉が軋みながら勝手に開き始める。


「――舐めているのか‥‥‥それとも敵とすら見なしていないのか」


ルカントは忌々し気に動く扉を睨みつける。プライドが傷つけられたと言わんばかりに小さく舌打ちする。


「――まあま、相手が油断してるなら儲けものですよ、王子サマ」


そんなルカントをアグナッツォは扉から目を離すことなくそう宥めた。


――扉が開ききる。

その先に拡がる空間へとルカントたちは踏み入る。ステンドグラスを透過した彩色豊かな光の照らす大理石の床。精緻な彫刻を施された柱が並ぶ様子は、神殿のような荘厳さ。天井には黒硝子を用いた豪奢なシャンデリアが三つ並んでいるが、その蝋燭に光はない。


そしてその奥、天鵞絨ビロードの天幕を背に負い、暗がりの中紫檀で出来た重厚な椅子の上に座する影――それは、ルカントたちの姿を視認しても一切動くことはない。ただ泰然とそこに座していた。


部屋の中に漂う濃密な魔力――そのあまりの圧力にルカントたちは更に歩みを進めることを思わず躊躇ってしまう。


「――客人かな? ああ、お客人だね?」


声が響く。

それはしわがれた声の老魔術師を想像していたルカントたちにとっては衝撃的なほどに高く張りのある声だった。

困惑する一行をよそに影は椅子の肘にほほ杖をついたのと逆の手を軽く振り上げる。するとその途端、部屋の脇にあった燭台に、宙につられたシャンデリアに、一斉に青白い炎が灯る。


そして浮かび上がった玉座に座る魔術師の影。


「――何‥‥‥?」


ルカントは思わずその姿に困惑の声を漏らす。シャールもまた、呆気にとられたように口を開ける。

紫檀の玉座に座する魔術師、その姿はシャールといくらも変わらない―――幼さを残した少年の姿だったから。

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