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Ep.7-43

シャールたちは、ユーラリアを先頭にして魔物たちに両脇を固められた城門への道を進み、ついに暗黒大陸の王都メルグバンドへと至った。

彼らのしんがりを務めるエリオスが、城門の向こう側へと入った瞬間に城門がひとりでに閉じる。


「――ッ!」


エリオスは振り返り、すっかり閉じ切った城門を見て小さく舌打ちをする。

彼の足下では、城門まで伸びていた影が蠢きながらずるずると小さくなっていった。


「影を城門の向こう側に伸ばしていたんだけどね。城門が閉まった瞬間に断ち切られた――閉じ込められた、という格好だね」


エリオスはそう言いながら苦笑を漏らす。その言葉に、シャールの表情に緊張が走る。次の瞬間にはシャールは聖剣に手を伸ばして戦闘態勢のまま周囲を見渡す。しかし、周囲に敵影は無い。それを確認するとシャールは小さく安堵の息を漏らす。

そんな彼女と同様に、ユーラリアも周囲に視線を走らせてから小さくため息を吐く。


「なるほど、サウリナが私たちをここに招き入れたのはこのためですか」


「聖剣使いたちを主戦場から分断するってこと?」


ユーラリアの言葉にエリシアがそう問うと、彼女は小さく頷いた。

すなわち、主戦場である大平原から聖剣使いやエリオス、リリスたちのような趨勢をひっくり返しかねない鬼札を排除することが目的ということだ。

この戦いは本来的に、順当に行けば魔王軍が勝利する戦だ。魔王軍の正規兵たちの数は確かに聖教国軍には劣るが、その連帯や各兵卒の実力でいえば、魔王軍の一兵は聖教国軍の兵士数人がかりで抑え込めるかどうかというものだと考えられていた——そして、その見通しは図らずも峡谷の道での『蟲』との戦闘の中で実証されることになってしまった。

確かにユーラリアの活躍や、本陣でのレイチェルの働きにより士気は上がっているが、厳然たる実力差を覆すのは難しい。

加えて敵方には、ほぼ無尽蔵に不死者の兵士を繰り出すことができる死霊術師たるサルマンガルドがいるのだから、数の差という聖教国軍の優位でさえ絶対的なものではない。

それでもユーラリアたちがこの戦に勝機を見出したのは、聖剣と賢者と悪役という切り札の存在があったからだ。このカードが、兵力差において圧倒的優位をとる魔王軍優勢の戦況を、ひっくり返すものであると考えていたからこそ、この戦いは始まった。

しかし今、切り札は城壁の内側に閉じ込められて、主戦場へは出ることができない。残された唯一の聖剣使いであるレイチェルもまた、総指揮官として本陣にいるため前線に立つことはできない。そんな状況だ。

このままいけば、時間の経過とともに聖教国軍はみるみる疲弊、損耗して魔王軍が勝利を確実なものとすることになる。

そんな状況にありながら、ユーラリアは薄ら笑いを浮かべていた。


「まあ、無意味なことですけれどね」


ユーラリアはそう言ってほんの僅かに嘲るような色を口端に浮かべながら、歩き始める。悠然と、堂々と。まるで己が城にいるかのように。


「このようなささやかな罠では我々がやることは揺らがない。我々の計画は何一つ変わらないのですから」

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