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Ep.7-33

馬を駆りながら、ユーラリアはちらと背後を見遣る。

視線の先には突撃隊を率いるザロアスタの姿が映っていた。ザロアスタはその視線に気が付くと、馬に鞭を入れて加速させると、彼女の横へと追い付いて並走する。

そんなザロアスタにユーラリアはゆったりとほほ笑む。


「あら、追いついたのですねザロアスタ卿」


「クハハハハ! やっと先陣へと参じることができましたぞ! いや、一番槍は我こそがと思っておったのですがな。まさか猊下に先を越されてしまうとは。だが、素晴らしい戦いぶりでしたぞ。我輩、感銘を受けましたぞ!」


「あ……相変わらずうるさい……もとい、御健勝が分かりやすくて結構です」


呆れた表情でユーラリアは目を細めると、じっと敵陣を見つめる。こちらの接近に合わせるように敵陣も動き始めていた。先んじて狼や山猫を大きくしたような魔獣や荒ぶる地竜が迫る。そしてその後ろから、武装した巨人やオーク、オーガ、ゴブリンたちも進軍し始める。

それを見て、ユーラリアは小さく舌打ちをする。それから更に後方、聖教国軍の本陣へと視線を投げる。

視線の先では、ザロアスタたちの突撃隊に加えてぞろぞろと聖教国軍の本隊が動き出していた。それを見て、ユーラリアは再びザロアスタを見遣る。


「敵軍と接敵したら、まずは露払いを。本隊との合流後に貴方がたは本格的な戦闘行動へと移行しなさい——それを合図に私たちは城壁の向こうへと突撃します」


「承知——!」


そう言うとザロアスタは速度を落として、突撃隊の先頭へと戻っていく。それを見送るユーラリアにエリシアが声をかける。


「――ユーラリア、来るよ」


その言葉にユーラリアは前方を見る。それとほとんど同時に、敵軍の先陣を切っていた狼のような魔獣が3匹、その速度を速めたかと思うと、先頭を走るユーラリアに向けて飛び掛かる。


「猊下――!」


思わずシャールは叫ぶ。しかし、ユーラリアは眉一つ動かすことなく、馬上で聖剣を抜く。ぎらりと聖剣が黄金色に輝く。その瞬間、空中に浮いていたはずの魔狼の身体が消える。否、彼らの身体は地面へと叩きつけられたのだ。彼らの身体の下から伸び出た鎖が、彼らの身体を絡めとり地面へと空に浮かんだその肢体を引きずりおろした。

哀れな魔狼の悲鳴が小さく響く。次の瞬間、魔狼の身体は全速力で地を駆ける騎馬たちの蹄に蹴りつけられ、撥ねられて舞い上がる。

その様に敵陣の魔獣たちはわずかに怯むが、ユーラリアたちは進撃を止めない。

ユーラリアはにんまりと笑いながら、剣を抜きその周囲の空間から鎖を展開させる。

そして騎馬から跳躍して、敵兵たちの前に降り立つと、乱れた髪を掻き揚げて猛禽の如き光を宿した瞳で敵を見つめる。

魔人や魔物たちはたった一人の少女を前にしているだけだというのに、思わず後じさりする。そんな彼らにユーラリアは微笑みかける。


「さあ、貴方たちに我々を止められますか?」

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