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Ep.7-27

「――これは其方の差し金かな、最高巫司殿」


黒い光の結界の中で、モルゴースは怒りに似た感情をわずかににじませながらそう問うた。その言葉に、ユーラリアはわずかにうなずく。

モルゴースは、迫りくる聖教国軍の姿に目を細めながら顎をさする。


「陣中に奴らの士気に火をつけた者がいるな……ふん、優秀な部下がいる者を相手にするのは難儀なものだ」


「ええ、私の部下はとっても優秀なのです。ちょっと過保護のきらいがありますけれどね」


ユーラリアはそう言って年相応の少女らしくはにかむと、自らの下へとはせ参じる兵士たちと、彼らを鼓舞した優秀な部下が指揮を執る本陣を見つめる。そんなユーラリアに呆れ半分のため息を漏らしながら、モルゴースはゆるゆると首を振る。


「結構なことだ。まったく、我のせっかくの努力が台無しだ……だが」


そこで言葉を切ったとたん、モルゴースの目がぎらりと煌めいた。その目は、自陣を見つめるユーラリアの首筋に向いている。そして次の瞬間、モルゴースの身体が大きく跳躍する。狙うのはユーラリアの首。躍り上がったその身体は大きく聖剣を振り抜いて、少女の首を刈り取ろうとする。

――ここでユーラリアが衆目の中死ねば、再び彼らの士気はくじけるに違いない。そんな確信に基づいての攻撃だった。

ユーラリアはそれに気が付いて振り返るが、回避も反撃も、もはや間に合わない。その表情は凍り付いた。


「いただくぞ、その命――!」


モルゴースの聖剣が彼女の首へ向けて振り下ろされる。その瞬間、モルゴースはあり得ないモノをみたように表情を引きつらせる。彼女が――今まさに首を刎ねられようとしている少女が、笑ったのだ。

次の瞬間、モルゴースは尋常ならざる魔力の動きを感じ取る。

どこだ――どこから来ているのだ、この魔力の蠢動は。

動揺しながらも聖剣を振り抜くモルゴース。しかしその刃はユーラリアには届かない。

モルゴースの聖剣は、高い金属音を響かせながら動きを停止する。その光景に、魔王は絶句する。


「――黄金の、刃……?」


モルゴースの聖剣とユーラリアの間を遮るようにそれは現れた。黄金色の鉱物の群晶――その中でも最も大きな結晶柱がモルゴースの聖剣を受け止めていたのだ。

モルゴースは反射的に聖教国軍の本陣を見る。この結晶柱の群れは、一直線にまるで地面を裂くようにして聖教国の本陣からここまで伸びていたのだ。

モルゴースは、その始点と思しき一点を見つめ、歯噛みする。


「――『晶析』の、シャスール……!」


聖教国の本陣。その最前には、『晶析』の理を司る聖剣を大地に突き立ててこちらを見つめる、光輝に満ちた黄金の騎士の姿が見えた。

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