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Ep.7-23

「――其方、いったい……」


「これ以上のおしゃべりは無粋ですよ、魔王モルゴース。あとは結果を御覧じていただければ——!」


そう笑うとユーラリアは聖剣を自身の面前に構えると、総身に魔力を巡らせる。

次の瞬間、再びユーラリアは尋常ならざる速度でモルゴースに迫る。身体強化の魔術も、聖剣によるバックアップも、そして鎖による強制的な肉体操作も全てを駆使しての神速の攻撃。

モルゴースも先ほどまでの猛攻を経験したがゆえに、対等の存在と相対するがごとく聖剣を構える。

二人の剣がぶつかり合う。

魔力を限界まで込められた聖剣同士の衝突、その衝撃は二人を取り囲む結界を大きく揺るがした。


「――ッ!」


「まだ――!」


モルゴースもユーラリアもその衝撃に圧されながらも、その場に何とか踏みとどまり、次の一撃を繰り出さんと構える。

素早く間隙を縫うようなユーラリアの剣戟と鎖の猛攻、それに対してモルゴースも聖剣でもって剣戟を打ち払い隙あらば魔術によって氷炎を繰り出して応戦する。

二人の剣と魔力がぶつかり合うたびに、空気がびりびりと震える。

鎖を操りながら回転して剣を振るうユーラリアの戦いぶりは、まさしく彼女が言うように踊り子が舞台の上で情熱的に踊るようだった。一方のモルゴースは、繰り出される連撃を的確にいなし、その場を動くことなくユーラリアの多彩にして多方向からの攻撃を受け流し、聖剣と魔術による自分の攻撃を差し込んでいく。その様は、どこか楽壇でタクトを振るう指揮者のようにも見えた。

神格憑衣——正義と戒律の神たるマナフの衣を纏い、輝きを放つユーラリアと、濃密にして破滅的なまでの王気を放ち立ちはだかるモルゴース。その戦いの様はまるで神話の戦いにも比肩するような凄絶にして荘厳な光景だった。

そんな中、不意にユーラリアが後方へと飛び退いた。モルゴースは追撃をしようと体勢を変えたが、すぐに違和感を感じて踏みとどまる。

そして次の瞬間、モルゴースの耳に叫び声のようなものが聞こえた。否、これは咆哮というべきだろうか。

その瞬間、モルゴースは戦いが始まってから、ユーラリアから初めて目を離す。そして気がつく、ユーラリアの言っていたことの意味を。


「——なるほど……はは、やってくれたな」


モルゴースは結界の外を見て、苦笑を漏らした。

魔王の視線の先、そこには自陣から打って出てきた聖教国軍の姿があった。先陣を切るのは騎馬に乗った老騎士——ザロアスタ卿。そして彼らに続いて、扇状地の両翼に展開していた軍勢も雪崩のように進撃してくる。


「せっかく自ら骨を折って、士気を砕いたというのになァ」


自嘲的な笑みを浮かべながらモルゴースはそう零して、迫り来る聖教国の軍勢を眺めていた。

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