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Ep.7-8

ユーラリアが提示した作戦――兵士たちの士気を最大限にあげるための策。それは、自分自身が最前線で戦端を開くことだった。

当初、この戦が始まったときはユーラリアが前線に立つ予定は無かった。本陣にて戦況を見守り、他の聖剣使いたちが敵の軍勢に穴をあけ、魔王への道が開けたタイミングで彼らと合流し、ともに魔王を討ち取る。これが当初の作戦だったはずだ。

最高巫司である彼女の安全と、彼女の武功――すなわち統制局長を圧倒する力をつけるための材料を得るという目論見。これは、この二つの優先事項を調和させた作戦だった。

尤も、レイチェルからすれば、そもそも彼女が暗黒大陸へとやってくること自体反対だったのだから、相当な妥協の産物だ。もはや限界と言ってもいいラインまで、いやいやながらも彼女は妥協していた。

しかし、先ほどユーラリアが提案してきた策は、そのラインを軽々と踏み越えてきた。

彼女が提案してきた策――彼女自身が、他の聖剣使いたちとともに勅令旗を掲げながら、魔王軍の本陣へと攻め込み、虚を突いてあちらの陣を崩す。今の兵士たちにはもはや言葉などでその士気をあげることは叶わない。ゆえに、後は行動で彼らの士気をあげなくてはならない。そう考えた結果導き出されたのが子の策なのだ。

だが、それは彼女が一般の兵士たちと同様に――否、あるいはそれ以上の危険に晒されると憩うことだ。雑兵に取り囲まれて襲われるかもしれない、雨あられのような流れ矢があたるかもしれない。魔獣にその四肢を食いちぎられてしまうかもしれない。あっけなく、その命が奪われるかもしれない――そんな可能性がある作戦を、レイチェルは許容できない。

だが、許容できないからなんだというのだろう――


「確かに私が反対したとして、あの方はこの策を実行に移すだろう。だから、きっとこんなことをしても意味はない……それは分かっている。でも、私は……」


「――貴女は貴女であるがゆえに、それを認めることはできはしない。ということですかしら?」


リリスの言葉にレイチェルはわずかにたじろぎながらも、黙ってうなずく。

そうだ。例えこのささやかな反抗が実を結ぶことは無かったとしても、積極的に彼女の策に賛成すること――彼女の身を危険に晒すことに加担するなんて選択肢は取ることができない。


「そう、やはり貴女はそうなのですわね。ふふ」


「何がおかしいのです?」


「いえ。思った以上に貴女は見た目通り、普段の行い通りの人格なのだと思っただけですわ。裏表のない、まっすぐな人柄――ほんとうに……私とは真逆、ですわね」


リリスの賛辞とも嘲りともつかない言葉に、レイチェルは眉間にしわを寄せる。そんな彼女に、リリスはわずかにほほ笑みながら告げる。


「でも、そんな貴女だからこそやっぱり今のままでは後悔しますわ――きっと」

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