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Ep.6-127

数分後、尖塔の最上階のモルゴースの私室には魔王軍の幹部が集っていた。突然呼び出されたサルマンガルドは、やや不服げな表情をしていたけれど、それでもあのアルカラゴスを退けた少年との戦闘に関する知見には関心があるらしく、割合素直に参集の命に応じた。

三卿たちが自身のもとに集ったのを確認すると、モルゴースは語り始める。聖教国軍に対する襲撃について、未知の権能を使う少年エリオス・カルヴェリウスについて、そして聖教国軍全体について。


「随分と……派手に立ち回ったものだな……我が主。あまりにリスクが大きいのでは……?」


「む。そうかのう?」


「——エリオス・カルヴェリウスなる少年の能力を探ることは大事、民の保護も同じく……だが、冒す危険と比較すると、得られるものが小さいのでは?」


サルマンガルドの窘めるような言葉に、モルゴースは肩を竦める。正直サウリナも同じような心情だったが、民の命を軽く見るような言葉は彼女には口に出せなかった。民の命が軽いのではなく、モルゴースの命が重いだけなのだと分かってはいるけれど。

サウリナは珍しく、サルマンガルドに同意と感謝を抱いた。

しかし、そんなサルマンガルドの言葉に、ナズグマールが異議を唱える。


「いやいやサルマンガルド殿。我らが主が得たのは、それだけではありませんよ。少なくとも、我が主が襲撃した理由を最高巫司たちは知っています。それはすぐに全軍に共有されることとなる。そうなれば、襲撃のトラウマを抱えた兵士たちはモルゴース様の民に無為に手を出したりはしなくなるでしょう」


「即ち、我らとしては民の安全をさして気にかけることなく、目の前の戦にほとんど全兵力を集中させられるようになる、ということか?」


サウリナはナズグマールの意図を推し量るように、その結論を確認する。彼はサウリナの言葉に、にっこりと笑って頷いた。その笑みに、サウリナは僅かに眉根を寄せる。


「ええ、その通りですよサウリナ殿。流石は三卿随一の側近でいらっしゃる」


微笑みながらナズグマールはサウリナを讃える。彼の笑顔は苦手だ。感情の奥底が読めない仮面のような笑み。腹の底では何を考えているのか分からない。直前まで談笑していた相手を、何の理由もなく突然に笑いながら切り刻みそうな不穏さを感じさせる。

そんな彼から視線を外して、サウリナはサルマンガルドとモルゴースの方を見遣る。


「とりあえず、この話はここまでにしましょう。それよりも、モルゴース様。どうか我らにお聞かせ願いたい——聖教国の軍はいかなるものであったか、聖剣使いたちは、そしてあの少年は我らの脅威たりえるのか」


話題を本筋へと戻すサウリナの言葉に、モルゴースは片眉をぴくりとあげる。その顔には不敵な笑みが浮かんでいる。そんな魔王に、サウリナは更に続ける。


「そしてどうか我らにお聞かせを。強靭なる戦士としての、稀代の魔術師の一人としての、聖剣を調伏せし者としての、軍団指揮者としての——そして、この暗黒大陸の統治者たる強く賢き魔王としての貴方のお考えを」

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