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Ep.6-101

あけましておめでとうございます。

今年も拙作をよろしくお願いいたします。

「聖剣——たしかハルヴァタート、とか言うのだったっけ?」


エリオスは霧散していく自らの影の向こうに立つモルゴースを睨むように見つめる。そんな彼の表情に、魔王はにんまりと笑いながら応える。


「おうさ。これぞ我が降したるハルヴァタートよ。どうだ、この燦然たる輝きは」


「忌々しいことこの上ない」


吐き捨てるようなエリオスの言葉に、モルゴースは機嫌を損ねるでもなくニコニコと笑ったまま。


「ふふふ、そうであろうなァ。何せ其方の恐ろしき槍を霧散せしめるような代物なのだから——」


目を細めるモルゴースの言葉に、エリオスは小さく舌打ちをする。そんな彼の反応を見て更に表情を嗜虐に歪めたモルゴースは、追い討ちをかけるように口を開く。


「其方のその力——この世界に存在するあらゆる魔術系統からも外れたその力は一体何なのだろうなぁ。まあ、その正体などここで考えても詮無きこと。まずは、其方のその力による攻撃がこの聖剣で無効化できるというのが一つの収穫よな」


「——別にこれ以外にだって牙は幾つだってあるさ」


「ほう、それは多彩なことだなぁ。ならば、我に見せてくれたまえ」


エリオスの言葉をどう受け取ったのかは分からないけれど、変わらずモルゴースの笑みは崩れない。エリオスはちらと周囲を確認しながら、右手をモルゴースに向けて差し伸ばす。

その指先にモルゴースの注意が引かれたのを確認すると、エリオスはそのまま指をパチンと鳴らす。

その瞬間、彼の指先から黒い風が吹き荒ぶ。『暴食』の風——それは、峡谷の道をのたうち回るように吹き荒れながら、魔王を取り囲む。


「ほう」


風が触れた部分の岩肌や地面が酷く食い荒らされたように抉れているのを見て、モルゴースは感嘆の息を漏らす。黒い風がどういうモノなのか理解したのだろう。

触れればかなりの広範囲の身体的欠損は免れない。それを理解していながら、魔王はひどく落ち着いていた。


「——ふん」


魔王は回転するように大きく剣を薙ぐ。その瞬間、聖剣に斬られた黒風は影の槍と同じように力も音も失って霧散する。それを満足げに見ながら、モルゴースは笑う。


「この風も先の槍と同じだな。匂いですぐにわかった。そして聖剣に触れるだけで霧散する性質も同じだろうということもな。芸がないのう、エリオス?」


「ふふ、私もそう思うよ。それだけならね」


エリオスがそう返した瞬間、不意にモルゴースの頭上に影が落ちる。暗くなった視界に、モルゴースは思わず視線を上げる。


「ほう」


魔王の頭上に迫るのは巨大な落石。最早回避など出来る距離ではないことは一目瞭然だ。

モルゴースはそれから、その落石が落ちてきたであろう場所を見て、何が起きたのか理解する。

峡谷の道の反り立った岩壁。そのうちの一箇所が丸く抉り取られていた。その側には先程モルゴースが聖剣で霧散せしめた影の槍。なるほど、あの槍で岩をくり抜き落としたのだ。魔王が『暴食』の風に気を取られているうちに。


「なるほど、のう」


迫る巨石を前にモルゴースは乾いた笑い声を上げながらそう漏らした。

休養期間をいただきありがとうございました。

本日より連載を再開いたしますが、前回の更新の際にお伝えしていた通り、本業が繁忙期を迎えたため、更新頻度を1日一話に下げさせていただきたいと思っております。

繁忙期は2月いっぱいまでとなっておりますので、それ以降については近くなりましたら追ってお伝えさせていただきます。

なお、更新は基本的にお昼に行う予定です(夜は残業により不定期になることが予想されるため)。

読者の皆様におかれましては、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。

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