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Ep.6-93

ルイたちは、シャールやエリシア、リリスにも重ねて礼を言うと、三人揃って家路へとついた。そんな彼らの姿を見送りながら、ユーラリアはぽつりと呟くように言う。


「存外——いい出会い、だったかもしれませんね」


「え?」


ユーラリアの言葉に、シャールは思わず彼女の顔を見る。どこか遠くを見るような寂しげな顔だった。そんな彼女の顔に、シャールはきゅうと胸を締め付けられるような感覚を抱く。そんなシャールに、ユーラリアは無言で微笑むと踵を返す。


「さあ、私たちも帰りましょうか」


そう言って彼女は歩き出した。

シャール達は顔を見合わせてからその後を追う。

野営地への帰り道に、ユーラリアは雑談のように話し始めた。


「——実は、私がアーノルドに語って聞かせたことは半分くらいはハッタリなんです」


「え?」


そんな風にどこか楽しげに語る彼女の言葉に、シャールは思わず驚きの声を上げる。そんな彼女にユーラリアは「いい反応です」とさらに楽しげに笑う。


「もちろん、嘘はついていませんよ。ただ、本当のことを隠し、ずらし、ぼかして、私に有利な側面を強調しただけのこと」


「あー、やっぱり。なんかボクが勉強させられた歴史の話とところどころ違うなとは思ってたんだよねぇ」


エリシアは目を細めながら、どこか呆れたような表情でユーラリアを見遣る。そんな彼女の視線にユーラリアはわざとらしく肩を竦め、ぺろりと舌を出して見せた。


「たとえば魔人を排除する思想は過去の歴史から見ても異端である、みたいな語り口で私は言いましたけど、そもそもそれについては神学論争において結論が出ていないのです。あくまで私が言ったのは有力な学説の一つに過ぎません」


「え、じゃあ魔人排除を扇動した聖職者が異端として処刑されたって言うのは……?」


「嗚呼、それは本当ですよ。ただ、処刑の理由は魔人排除の思想が直接社会につながったのではなく、彼らのやり口が過激であり、かつ教義に反するようなことを口にして人々を煽ったから。神の教えを自分に都合よく捻じ曲げた罪、ですね。事実として彼らは魔人排除の活動の結末として、異端の名を受け処刑された。この点は変わらないですから、あのアーノルドでは、きっとこのハッタリが見破ることはできないでしょう」


淡々とそう語るユーラリアの強かさに、シャールはどこか脱力するような感覚に襲われた。それと同時に、ハッタリに命を賭けて乗り切った彼女の豪胆さに、ある種の感嘆を感じえなかった。

シャールは、ふと気になってユーラリアに問いかける。


「最高巫司様……どうして、そんな危ない橋を渡られたんですか? もしかしたら、異端として処刑されてしまうかも知れなかったのに」


もし、アーノルドが神学についてもっと深い知識があったなら、歴史についての広範な知識を有していたなら、彼女のハッタリは見抜かれてしまっていたかもしれない。そうなれば、場合によっては彼女も「神の教えを自分に都合よく捻じ曲げた」と評価され、異端の烙印を押されてしまうかもしれなかったのだ。それを、何故——?

シャールの問いかけにユーラリアは口元に指を当てながら考え込み、そして口を開く。


「それは——」

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