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Ep.6-77

山羊角の少年は、駆けつけたシャールたちを見て強張った表情をわずかに緩めたが、直ぐに自分の中に浮かんだ甘い考えを振り払うようにぶんぶんと首を横に振る。


「一丁前に男を見せようとしてるのか? 魔人風情が——よォ!」


幼い魔人を取り囲んだ兵士の一人が嘲笑いながら、少年の顔を思い切り蹴りつけた。体重と勢いの乗った金属製の軍靴が少年の頬にめり込み、吹き飛ばされる。少年の身体は固い岩場に叩きつけられた。まるで毬のように跳ねた少年の姿を見て、兵士たちは腹を抱えて爆笑する。


「なっさけねえガキだなあ! 魔人なんて言ってもこんなもんかよ? こいつは魔王軍の連中をぶち殺すのなんて訳ねえかもなあ!」

「せっかくだ! こいつで、魔人ってイキモノがどれくらい丈夫なのか確かめてやろうぜ?」


そう笑った二人の兵士は、倒れ伏した少年の元まで歩いていくと、一方が無理やり少年を立たせて羽交い絞めにする。そしてもう一方は握りしめた拳に熱い息を吹きかけてから思い切り引いた拳を少年の露出した柔らかい腹部に思い切り叩き込む。


「ぐぅううッ! が……ぁぁ、かふぁ」


「やめて! ルイが死んじゃう!」


青肌の少女ロアが兵士たちに向けて叫ぶが、彼らはそれを聞き届けることもなく苦悶にあえぐ少年の姿を見て笑っている。そんな彼らを、金髪の少女は強く睨みつけながら右腕を前に突き出す。彼女の腕の先に魔力が収束していっているのが見て取れた。魔術を使う気だ。しかし――


「おっと、何しようとしてんだいお嬢ちゃん?」


太い腕がにゅっと彼女の横から現れて、金髪の少女の細腕を掴んだ。彼女の腕をつかんだ兵士はにやつきながら、ぎりぎりとその太い指に力を入れて、少女の腕をひねり上げる。


「――ぃああああ!」


「良い声だ、それに見た目もいいなあ。こういう奴隷なら、大陸に戻っても売れるんじゃねえか?」

「いやいや、この青肌の奴だってモノ好きには売れるだろうさ。魔人を狩って金を稼げるともなれば、士気も爆上がり、最高巫司サマもお喜びになるんじゃねえか?」


下卑た笑い声をあげる彼らの姿に、シャールは胃の奥底から食道を駆けあがって来るモノを必死で抑え込む。そんな中、彼女の隣に立っていたエリシアが一歩を踏み出す。


「ボクの主を軽々に語るなよ、お前たち」


エリシアの言葉に、兵士たちは振り返り表情を引きつらせる。山羊角の少年と金髪の少女を掴んでいた兵士に至っては彼らを手放してしまうほどに驚いていた。そんな彼らに、エリシアは更ににじり寄り、低い声を発す。


「――勘違いするなよお前たち。あの人がお前たちごときと同じ地平に立っているなんて、愚かしすぎるにもほどがある。そう思考したこと、それだけでボクからすれば刎頸に処するに値する罪だ。挙句彼女がこんなことで喜ぶと? 本当にふざけている――」


そう言いながらエリシアは聖剣を抜く。その刀身は赤く、紅炎を纏っている。シャールは思わず彼女の顔を見て、息を呑む。彼女の顔には、その言葉通り殺意に満ちていた。

少しお久しぶりのお願いです。

拙作をここまでお読みいただき、ありがとうございます。もしお気に召していただけたのならば、評価、感想、レビュー、ブックマークなどしていただけますと幸いです。

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