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Ep.6-69

この野営地で初めて言葉をまともに交わしたリリスとエリシア。全くタイプの違う二人だったが、エリシアの持ち前の愛想のよさと、シャールの取り成しによって、瞬く間に親しくなっていった。互いの生い立ちの話や他愛のない話を重ねていた。戦場の只中であるということは分かっていたけれど、こんな穏やかな光景が目の前で展開されているということに、シャールは思わず表情が緩んでしまう。

そんな中、不意にエリシアは表情を硬くする。


「――さて、もう少し女子同士の話(ガールズトーク)に華を咲かせたいところではあるんだけどね。ひとつ君たちに相談……というか、手伝って欲しいことがあってさ」


「あら、何かしら?」


エリシアの急な真剣な声音に、リリスも目を細める。そんな彼女に、エリシアは心強そうに微笑みながら続ける。


「これはまだ、誰にも言っていない話なんだけれどね――さっき話した通り、君たちが軍議をしている間、ボクは野営地とその周辺の見回りをしていたんだ。一応、レイチェルちゃんたちには異常なしと伝えてはいたんだけど、少しだけ気になることがあったんだ」


「気になること?」


「そう。この平野から結構離れたところに岩場があるのは君たちも知っているだろう? そこにね、ボクたちの軍の構成員とは明らかに違う人影を見たんだ」


エリシアの言葉にその場の空気が凍り付く。心臓を掴まれたような驚きと緊張感に思わず息が詰まる。言葉を失うシャール。一方、リリスは驚いたような表情を一瞬歪めたがすぐに平静を取り戻して、冷たく低い声で問いかける。


「念のために確認しますけど、貴女はそれを黙っていることが基本的には重大な背任行為になるということを理解していますわよね?」


「もちろん」


リリスの言葉に僅かに表情を引き攣らせながらも、エリシアは不敵に笑んでみせる。その表情に何かを感じ取ったのか、リリスは小さくため息を吐くとゆるゆるとかぶりを振る。


「つまり、貴女が見たのは見逃しても背任には当たらないような代物、という理解でいいのかしら?」


「そういうこと。理解が早くて助かるよ」


嫣然と微笑むエリシアの表情に、シャールはどこか安心感にも似たような感情を抱きながら、彼女の話に耳を傾ける。


「ボクが見た人影は二つ、どちらも背丈はおそらくシャールよりも低い。恐らくは子供——当然、ボクらの軍勢の中には子供と言える年齢なのはシャールと最高巫司くらいしかいない」


「となると、魔人かしら?」


「まあ十中八九そうだろうね。ただ、その動きを見ていてボクが感じたのはあまりにもひどい素人感だ。ボクの目から見たら、隠れる気があるのかすら怪しいくらいにね。一周回って罠かとも思わされたよ」


そう言ってエリシアは肩をわざとらしく竦めてみせる。そんな様を見てリリスは口元に手を当てる。恐らく一歩先、彼女がするであろう「相談」への回答を決めているのだろう。シャールも、ようやくエリシアが言わんとしていることが何なのか見え始めた。

そんな中、エリシアはぴっと人差し指を二人の方に突き出して「お願い」をする。


「色々言ったけど、つまるところ——あの人影の正体がなんなのか、念のため確認するのに付き合ってほしい、というわけさ」

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