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Ep.6-62

「と、まあこれが暗黒大陸がこの名で呼ばれる理由さ。過去何度も英雄たちに平定されておきながら、何度もこの地に魔王が現れ、魔物たちを率いて人類世界と敵対するなんてことが起きうる理由でもある」


エリオスは暗黒大陸にまつわる講義をそう言って締めくくった。なるほど、たとえ英雄が単独で魔王を討伐したところで、大地そのものが人間を拒んでいるのならば、それを真の意味で完全に平定することはできないのだろう。だからこそ、こんな戦いの歴史が繰り返されるわけだ。

どうしてこんな土地になってしまったのだろうか? この土地だけにそんな異質な魔力が満ちているのだろう。そんなささやかな疑問をシャールはエリオスに問いかけてみたけれど、彼はほんの少し考えてから、短く「さあね」と切り捨てた。エリオスがこの点を疑問に思わないわけがないだろうから、おそらく彼が調べた文献なりの中には、その明確な答えや糸口は無かったのだろう。

エリオスはどこかきまり悪そうに被りを振ると、話を少し変える。


「歴代の魔王がこの地に居を構えるのは、エイデスと戦った原初の魔王の系列であるというある種の権威付けっていう意味もあるだろうけれど、それ以上にこの地が守るにしても、軍備を整えるにしても最適な地だからだろうね。人間たちの進出もないうえに、自身の力を蓄えるにも絶好の立地だ。それに有力な配下になり得る強大な魔物たちや魔人たちが原生している」


「魔物や魔人……」


シャールは「魔物」と呼ばれる存在は、ルカントたちとの旅路で数度見た程度。魔人については一度も見たことがないし、どんな存在なのかすら名前以外は聞いたことがない。

そうエリオスに言うと、彼は小さく鼻を鳴らす。


「魔人、というのは本来的にはヒト型の魔物全ての総称だ。とはいえ、人型の魔物の中にも種としての名前を持つものは多い。例えば、吸血種(ヴァンパイア)鬼種(オーガ)――サルマンガルドが操る不死者(アンデッド)だって、人の形をしていれば『魔人』に該当する。だけど、それはややこしいからね。現在は、そう言った種としての名を与えられていない人型の魔物を総じて魔人と呼んでいる」


「魔人は……強いんですか?」


「さあね。魔人は現代においては暗黒大陸以外には残っていないから、何とも」


「残っていない?」


シャールはエリオスの言葉にわずかな疑問を抱く。分布していない、住んでいない――そんな表現ではなく、『残っていない』という言葉。それではまるで――


「まるで、もともとは私たちの大陸にもいた……みたいな言い方」


「まるで、も何もその通りだからね。ふうん、本当にこの世界は教育ってのが行き届いていないんだねえ。特に歴史は致命的だ――自分たちが滅ぼした存在について、功罪含めて後世に引き継ごうという気概が感じられないね」

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