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Ep.6-56

昨日はお休みをいただき申し訳ありませんでした。

ユーラリアはエリオスの言葉に嫣然と微笑むと、自分の顔に触れていたエリオスの手を軽く払い除ける。そして、ちらと上目遣いにエリオスを見上げながら口を開いた。


「——そういう意味合いが結果として生じたということ……それは少なくとも間違い無いですね。ええ。そして、たとえその結果が偶然にせよ必然にせよ、私は自分の目的のためになるモノならばなんだって使う——私の人間性というのはそういうものです。これが答えでは、何かご不満?」


ユーラリアの言葉に、エリオスはくすりと笑うと一歩足を引いた。


「いや、実に満足だとも。それでこそ、だよ。うん、それが聞けて大変満足だ。本当にいい性格をしている」


そう言うと、エリオスはユーラリアたちの近くの席に座る。そんな彼をレイチェルはどこか厭うような目で見ている。エリオスはそんな彼女に苦笑を漏らす。


「そんな怖い顔をしないでよ。君たち二人だけの時間を邪魔して悪いとは思っているけれど、私も少し疲れてしまってね。ちょっとくらい休ませてよ」


「だから、そういうことでは——!」


「それに、どうせもうそんな時間も終わるんだし」


そう言ってエリオスはちらとテントの出口の方を見遣る。すると、布の扉の向こうから、誰かが駆けてくる足音が聞こえる。それはテントの前で急ブレーキをかけたように停止する。


「——失礼いたします! ご報告にあがりました!」


テントの布扉越しに、若い兵士の声が響いた。ユーラリアとレイチェルは顔を見合わせ、視線を交わして意思疎通を図る。


「入れ」


ユーラリアの意を汲んだレイチェルが、テントの向こう側にいる兵士に向けてそう声をかける。その声に応じるように、一人の兵士がテントの布扉を潜るように開けて入ってくる。

彼は、エリオスの姿を見て眉間に皺を寄せ、ユーラリアの姿に恐縮しつつ頬を紅潮させ、そしてレイチェルの姿に緊張して居住まいを正した。

エリオスとユーラリアはそのあまりの反応の明白さに思わず苦笑を漏らし、レイチェルは僅かにため息を吐いた。


「——君、最高巫司猊下の御前です。頭が高いのでは?」


「あ……は! 申し訳ありません!」


兵士はレイチェルの指摘に素早くその場に跪き頭を垂れる。それから黙りこくっている兵士にレイチェルはさらに深いため息を吐きながら、口を開く。


「報告をしなさい」


「は!」


必要以上に大きな声で返事をした兵士は、跪いたまま、話始める。


「二点ございます! 一点、軍艦からの荷の積み下ろし、人員の下船は終了いたしました! 最高指揮官である猊下の御命令をいただければ、それを以って、艦隊は作戦完了まで暗黒大陸沖合へと退避いたします!」


兵士の言葉にレイチェルはユーラリアの顔を見る。ユーラリアはそんな彼女の視線に応じるように無言で頷く。レイチェルはそれを見届けると、兵士の方を見遣る。


「よろしい。艦隊を退避させなさい。上陸業務に当たった者たちにしばしの休息と労いを。この旨、最高指揮官の命に依り通達する」


ユーラリアの意思をレイチェルが代弁する。最高巫司ともなればその言葉を一兵士に直接のかけるということはなるべく避けるのが作法なのだろうか。ユーラリアは言葉を一切発さない。

そんな儀礼的な意思表示に何ら違和感を持つことなく、兵士はその通達を受け取る。


「承知いたしました!」


「報告を続けなさい」


レイチェルがそう言うと兵士は、再び口を開く。


「は! 先遣隊が先程帰還いたしまして、魔王の居城までの道のりの確保、罠や敵軍の配置が無いことを確認いたしました!」


兵士のその報告に、レイチェルとユーラリア、そしてエリオスはそれぞれ僅かに反応を示した。ユーラリアは、レイチェルに耳打ちして自身の意思を伝える。


「報告ご苦労だった。危険を顧みず先遣隊の任を勤めた者たちに労いと休息を。そして、これより半刻後、進軍を開始する。各自、それに備えるよう伝令せよ」

約4年強ぶりに歯医者に行きましたら、まあそこそこ虫歯があった上、親知らず4本抜歯するよう宣告されました。

しんどいですね

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