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Ep.6-50

「さ、最高巫司猊下!?」

「な、なぜ猊下が船に……!」


暗黒大陸の海岸線へと漕ぎ出す小舟、そこに乗ったユーラリアの姿に、船団全体からざわめきが走る。

さしものエリオスでさえ、その光景に呆気にとられて言葉を失っていた。

船に乗っているのはユーラリアだけではない。どこか不服そうな顔をしたレイチェル、そして楽しげに櫂を操るザロアスタが同乗している。


「な……何を。は、早くお止めしろォ!」


慌て出す騎士や兵士たち。しかし、止めると言っても、誰に最高指揮官たる最高巫司の決定を覆し無理やり彼女を引き戻すことが出来るだろうか。

彼女の側仕えであり、ブレーキ役でもあるはずのレイチェルでさえ、あのようにして不承不承ながらに彼女の行動に従っている以上、もはや言葉による説得だって聞きはしない。


「え……あのお嬢さん本気? 彼女この軍の要だよね? えぇ……?」


エリオスも困惑の声を漏らしながら、慌てたような声をあげる。兵士たちが手をこまねき、エリオスやシャールたちが困惑しきる中、ユーラリアたちはどんどんと海岸線へと近づいていく。

そんな彼女たちを当然ながら海岸線に待ち受ける大軍勢が見逃すわけもない。再び彼らは一斉に強弓を引き絞り、ユーラリアたちの小舟に向かって矢を放つ。

放たれた矢は大きく弧を描き、ユーラリアたちの頭上に迫る。


「——ッ! こうなればここから……!」


エリオスは権能を発動させるべく魔力を急速に練り上げるが、もはや間に合いはしない。矢はすぐそこまで迫っている。

そんな中にありながら、ユーラリアは未だに嫣然と笑っている。


「ザロアスタ卿。お願いします」


「御意のままに——フンッ!」


ユーラリアの言葉に応えるように、ザロアスタは櫂から手を離すと揺れる船の上で立ち上がり、腰に佩びた大剣を抜き放ち、それを思い切り横に薙ぎ払う。その瞬間、彼の剣戟から生じた風圧が、つむじ風を起こして迫りくる矢のことごとくを折り砕き、海面へと叩き落す。


「――ぇ?」


その様を見て、エリオスやシャール、エリシアやリリス、そして甲板の兵士たちはそろって呆気にとられたような声を上げる。

続けて、サルマンガルドの不死者軍団は第二射を放つも、それもまたザロアスタの一刀の下、ものの見事に粉砕される。


「ハッハッハァァッ! 快なり、快なり、快なりィィィ!!」


「卿、おちついてくださいな。あまり興奮されると、私たちの耳がもちませんよ」


天を仰ぎながら豪笑するザロアスタに、ユーラリアは耳を押さえながら窘めるように、唇を尖らせる。ザロアスタはニッと笑いながら、胸に手を当てて慇懃に腰を折る。


「これは失敬。されど、この剣……やはり素晴らしいですなァ! さすがは、猊下御自らこしらえてくださっただけのことはある。我輩、感服しましたぞ」


そう言って、ザロアスタは再び剣を構えると、それを大きく一薙ぎする。その剣戟は真空の刃となって海面の上を、海岸線へと向かって奔る。そして次の瞬間、不死者の軍勢のうちの数十人余りが、一瞬で上半身を吹き飛ばされる。海岸線に噴き上がる血の雨を見ながら、ザロアスタは恍惚とした表情を浮かべる。

そんなザロアスタに苦笑を漏らしながら、ユーラリアはくすりと笑う。


「それじゃあ、私たちでこの戦いの先陣を切るとしましょうか」

ようやく50パート目にして上陸できそうです。この章長くなる予定なので、100パート前後のどこかで区切りましょうかね……

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