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Ep.6-39

シャールたちの船を見つめるアルカラゴスの視線に良く無いモノを感じたエリオスは硬直する。

そんな彼の表情に心なしか満足げな表情を浮かべるアルカラゴスは、鎌首をもたげるようにして全身を大きく震わせる。それと同時に、その両角の間に全身を走る紫電が収束した球体が生じる。

先ほどのように、そこから幾筋もの稲妻を放つのかとも思ったが、どこかがおかしい。エネルギーは収束する一方で、そこから何かが放たれるような予兆を感じられない。

それが意味することと言えば――


「……ッ! このクソ蛇……!」


エリオスは全てを理解したように、眉を吊り上げ怒鳴る。そんな怒りをあらわにするエリオスを横目に、アルカラゴスは紫紺の球電ごともたげた頭を振り下ろす。すると、高エネルギーの塊である球電は、アルカラゴスから離れて、シャールたちの艦を目掛けて飛んでいく。

あれが直撃すれば、確実にあの船は吹き飛ぶ。

それどころか艦隊の四分の一が被害を受け、もはや魔王軍討伐さえままならなくなる。船の一つがダメになるくらいならば、堪えようはあるがまだ暗黒大陸にすら上陸していないというのに、それだけよ兵力を失うのを看過することは、エリオスであっても許容できない。出来るはずがない。

それがあの龍は分かっているのだろうか。

目下殺し合っていたエリオスではなく、そちらを狙ったのだから分かっているのだろう——エリオスは忌々し気に影の羽根を大きく羽ばたかせると、球電と艦隊との間へと飛んでいく。


「――『踏破するは(Realize my)怠惰の罪(Sloth)』ッ!」


エリオスはコンパスのように回転しながら脚を大きく横一文字に振り薙いで、目の前の空間に巨大な裂け目を切り開く。

激しく発光する球電は漆黒の裂け目の奥へと消えていく。そして次の瞬間、ドンというくぐもった音と共に周囲の空気が大きく揺れ、漆黒の裂け目からも紫色の強い光が噴き出してくる。


「——ッ! これは……なんとも」


エリオスは表情を顰めながらも、左手を大きく薙いで、素早く裂け目を消し去る。それから、球電が飛んできた方を睨みつけたが、すぐに舌打ちをする。


「――ッ! なるほどね、流石は『力』のアルカラゴス」


エリオスはそう呟いて、皮肉っぽい自虐的な笑みを浮かべる。

そんな彼の見つめる先に見えるのは、暗黒大陸のある方角へと飛び去っていくアルカラゴスの後姿。もはや、その姿は銅貨よりも小さくなっていて、今更アレに追いつくことはできないだろう。

エリオスは舌打ちしながらも、どこか称賛するような目でその姿を見送ると、空で踵を返すと艦の上まで飛んでいき、上空で翼と四肢に纏っていた影を解除する。ふわりと甲板に向けて落下しながらつぶやく。


「引き際をちゃあんと弁えているみたいだね――まあいいさ。次に会う時は逃がさない、徹底的に躾けてあげようじゃあないか」


そう言ってエリオスは未だ混乱の最中にある船へと降り立った。そして、その中で駆けずり回る兵士たちや魔力を使い果たす寸前ながらに聖剣を操るシャールを見て苦笑を漏らす。


「初戦は引分ってところかな」

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