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Ep.6-33

ダイナミックに投稿時間が遅れてしまい申し訳ないです

「アメルタート——彼の者を捕らえて」


シャールの言葉が夜の潮風に解けるのと同時に、アメルタートが強い輝きを放つ。それと同時に、アルカラゴスに打ち払われ、今まさに力なく水面に落下していこうとする矢が空中で動きを止める。

振り払ったはずの矢が落ちることなく自分を取り囲んだまま、空中に滞留している様に、アルカラゴスもその眼に驚きの色を滲ませる。

次の瞬間、アルカラゴスの周りに浮かんでいた矢の木製のシャフトからめきめきと軋むような音が鳴り響き、そのヒビの隙間から、質量や体積の差を無視したような太い蔦が飛び出て、アルカラゴスに絡みつく。

宙に浮かんだ矢の全てから迸るようにアルカラゴス目掛けて飛びかかる幾本もの蔦。一本では容易く引き裂かれてしまうそれらも、重なり相互に絡み合えば次第に巨大な龍の身体すらも、蜘蛛の巣に飛び込んだ羽虫のように絡め取り、縛り上げていく。


「あれも——アメルタートの権能かい?」


感心したように口元に手を当てながら、エリオスはシャールに問いかける。シャールはそれを首肯すると手に持った矢を一本エリオスの前に示してみせる。


「アメルタートに魔力を込めながら、矢に少し傷をつけました。木製のシャフトになら、植物を司る聖剣の魔力が残りやすいかと思って」


放たれた矢は、敵を穿つための凶器ではなく、聖剣の魔力を分散して空中へと運ぶための媒体。聖剣から直接、蔦を伸ばさせアルカラゴスを捕らえようと思っても、空の支配者たるこの黒龍は自分から自由を奪わんとする魔手を簡単に避けてしまうことだろう。あまりに遠距離からアメルタートの権能を使ってアルカラゴスを狙っても、そもそも時間差や精度に問題があるというのは眼に見えていた。

そこでシャールは、聖剣の魔力を一時的に帯びさせた矢を放ち、一瞬でもアルカラゴスを聖剣の権能が取り囲むという構図を作り出し、それを遠隔で発動させた。これにより、アルカラゴスの油断を誘い、精度やタイムラグの問題を解決したのだ。

シャール自身、思った通りに行くという確信は無かったから、こうして目の前で伝説的な邪龍が自分の策によってのたうち回っている様に、驚きとある種の高揚を感じていた。

身体に絡みつき、振り払おうと思っても成長し続ける蔦に、空中でのたうち回っているアルカラゴス。このままいけば、蔦がその身体を完全に覆って、その翼は完全にその羽ばたきをする力を失い海へと落下することだろう。

そうなれば、あとはいくらでもとどめの刺しようはある。アメルタートの有効射程範囲にも当然入って来る。シャールも、甲板の兵士たちも、勝利を確信しかけていた。


「なるほどね。良い判断だ、作戦の発想力も素晴らしいと思うよ」


エリオスもまた、シャールの作戦に賛美の言葉を口にする。そんな彼の言葉にシャールは驚いて、彼の顔を見遣る。その目はずいぶんと穏やかだった。

しかし――


「でもね、伝説たる龍殺しを為すにはまだちょっと足りないな」


エリオスの声が響いた瞬間、耳をつんざくような嫌な音が辺りに響いた。

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