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Ep.6-31

開戦の勅令が発布されると、すぐにシャール達はエリオスと合流して、聖教国の首都ウィスプラティアを出発した。

十万を超える軍勢は二手に分かれると、それぞれに大陸の北端の大港湾を目指した。大港湾は数百年前に起きた魔王討伐の際に、討伐軍を暗黒大陸へと運ぶために開かれた港であり、暗黒大陸から攻め寄せる歴代魔王軍に対する、人類側の防波堤でもある。

ウィスプラティアを出発して馬に揺られること数刻でシャール達は大港湾に到着した。

大港湾には、ユーラリアが手配して大陸全土から徴発した軍艦がずらりと数え切れないほどに居並んでいた。その様はまさに圧巻でシャールはおろか、軍人でもあるはずのレイチェルやザロアスタですらも言葉を失っているほどだった。

それからまた数刻かけて、討伐軍全軍の搭乗が終わる頃には、既に日は沈みかけていた。

しかし、それも一応は予定通りだったようで、黄昏の中討伐軍の大船団は大港湾を出港した。

曰く、深夜には暗黒大陸に到達できるだろうとの見込みだそうだ。

夜の海は穏やかで、波を切って船が進む音が眠気を誘う。そんな中、シャールはふと思い立ち充てがわれた船室から甲板へと出た。

甲板には多くの屈強な騎士や兵士がいて、軽めの食事を取ったり駄弁ったり、武勇を互いに語りきかせたりして船旅の時間を潰していた。

そんな屈強な男達の間をくぐり抜けていくと、ふと見慣れた華奢な少年の姿が映った。


「エリオス」


「ん——嗚呼、シャールか」


船縁に肘をつきながらぼんやりと水面とそこに映る星々を眺めていたエリオスは、シャールの声に応えてゆらりと振り返る。


「どうしたのかな? お子様はそろそろ寝る時間じゃない?」


「お子様って……こんな状況でもぐっすり眠れるほど、幼くはないです」


「あはは、そうだったかな」


そう軽く笑うとエリオスは船縁に背をもたれて空を見上げた。そんな彼の横でシャールもまた船縁に背を預ける。

そんな彼女をちらと見やりながらエリオスは問いかける。


「ユーラリア嬢やレイチェル卿たちはどうしたんだい?」


「やっぱり話聞いてなかったんですね……レイチェル様とザロアスタ様は船団の左翼側、エリシアとリリス様は右翼側、最高巫司様は中央の船にいます。それぞれ万が一魔王軍からの攻撃があったときに迎撃ができるようにと」


「ふぅん。それはつまり、一番先陣の船に乗せられた私と君もまた迎撃要員ってこと?」


「そういうことです。よろしくお願いしますね」


シャールの言葉にエリオスはやれやれと肩をすくめる。それからエリオスは不意に船縁から背を離すと、猫のようにしなやかな動きで騎士達がひしめく甲板を抜け、船首へと歩いていく。シャールもその後を追う。

エリオスは船首に立ちながら、じっと前方を見つめる。遠くには霞がかっているが、広大な陸のようなものが見える。


「あれが暗黒大陸?」


「えっと……多分、そうだと思いますけど……」


「ふうん……じゃあさ」


そこで言葉を切ると、エリオスは視線を少し上げて目を細め口の端を吊り上げる。


「向こうから飛んでくるアレは、敵ってことでいいのかな?」

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