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Ep.6-28

「さあ、貴方達は?」


煌々と輝く蜂蜜色の光の中でユーラリアは静かに、それでいて統制局長のとはまた異質の凄みを感じさせる声で問いかけた。


「——自分たちの、自分の大切な者たちの明日が壊され奪われる。それを食い止めることができるのは、今この場に集った私たちだけ。さあ、考えなさい。そして応えなさい——指を咥えて誰かがやってくれると思いながら、受動的に与えられる明日がいつか失われるのを恐れる日々を送るのか? それとも、自分の手で明日を作り、切り開かんと命をかけて足掻くのか!」


ユーラリアの言葉が次第に、燃え上がるように強く熱くなっていく。その言葉に将兵の誰もが、統制局長の声に答えていた教義聖典官の騎士たちすらも引きつけられている。

そんな彼らの視線を一身に受けながら、ユーラリアはさらに続ける。


「応えなさい——神のため、世界のため、隣人のため。そして何より、自分と大切な人のため。希望に満ちた明日を奪還したいと願う者は私に応え、鬨の声を上げなさい!」


そう叫ぶとユーラリアは輝く聖剣を振り下ろし、真っ直ぐその切先を前へと突き出す。その剣が指し示す先は奇しくも、魔王の座する暗黒大陸の方角。

それと同時に、極限を超えて高まった将兵たちの戦意は、大地と神殿を大きく揺るがす鬨の声となって辺りに鳴り響く。

兵士たちはユーラリアの求めに応じて声を上げ、拳を天に突き上げる。

それをどこか満足げに見下ろしながら、ユーラリアは一呼吸置いてから再び口を開く。


「よろしいでしょう。皆の想いは今ここに一つとなりました。皆、剣を取り、命を賭して明日を掴み取ることを望むのですね。その険しく、恐ろしい道行を選んだ貴方達に敬意と、改めての感謝を——でも、この戦いは決して希望のないものではありません。何故ならば、我らにはとっておきの切り札があるからです」


そう言ってユーラリアは剣を下ろすと、テラスに居並ぶシャールたちの方を振り返る。


「紹介しましょう。我らが切り札、この戦いにおける精鋭たち——まずは東方の魔術大国メルリアが誇る天才魔術師、賢者リリス・アルカディス」


最高巫司に突然紹介されたことに戸惑いながらも、リリスは少し頬を赤く染めて一歩前に踏み出し、慇懃にお辞儀をしてみせる。それと同時に、眼下から喝采が湧く。それを見て満足げに頷くと、ユーラリアはさらに続ける。


「続けて我が聖教会が誇る騎士、異端訴追騎士団の長たるストラ・ザロアスタ。そして、聖剣シャスールに選ばれし我が近衛たるレイチェル・レオンハルト」


ユーラリアの言葉に応えるように、ザロアスタとレイチェルは一歩前に踏み出してそれぞれ剣を抜き、交差させてみせる。剣同士の触れ合う金属音が響くのと同時に歓声があがる。


「アヴェスト聖教の歴史上、英雄神エイデスを除いて主人を誰一人として選ぶことのなかった炎の聖剣ヴァイストに選ばれし勇者、エリシア・パーゼウス」


エリシアはユーラリアの言葉に応えるように一歩踏み出すと、テラスの手すりの上に飛び乗って、抜き放った聖剣を大きく空に一振りしてみせる。その瞬間に巨大な炎の柱が顕れ、見る者の驚きを誘った。


「そして、レブランクの亡き勇者、ルカント王子の意志と聖剣を引き継ぎ、数多の艱難辛苦と屈辱、試練を幼いながらに乗り越えてこの場に参じた新たなる勇者、シャール・ホーソーン」

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