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Intld.I-vi

またもや投稿時間をすっぽかしまして‥‥‥今日はもうだめかもしれない。ご迷惑おかけしました。

少ししてシャールはアリアと共に、エリオスを残して大広間を出た。

肉塊の始末を申しつけられたエリオスは唇を尖らせて明らかに不満そうな表情をしていたが、アリアが投げた「『ご主人様』の命令よ」という捨て台詞に観念したようだ。大広間のど真ん中で、一人どう始末したものかと思案を始めた。

そんな彼を背に、シャールはアリアの案内で館の中を巡る。

館はどこも黒や濃い紫色で統一されて、まるで棺桶の中のようだとシャールは感じていた。


「アンタ、仲間の死体を丁寧に埋葬してたみたいね」


一階の案内を一通り終えたアリアがふと、呟くように言った。


「え、あ——はい、森の中に。いけませんでしたか?」


「別に。手指をそんなに土で汚してるから、そうなのかなって思っただけよ」


そう言われてシャールは自分の手先を見てみる。きめの細かい肌には湿り気を帯びた土が薄く張り付いているし、爪の間に土の粒が入り込んでいる。よく見れば、素手で土を掘ったからか血が滲んでいる指もある。

そんなシャールを見ながら、アリアはふんと鼻を鳴らす。


「死体なんて跳ね橋から堀にでも投げ捨てておけば良かったのに。別に私もエリオスも気にしないわ」


「———ッ! そんなこと、できるわけが……」


「どうして? アンタとあいつら、別にそんな明るい関係じゃなかったでしょ?」


アリアの一言に、シャールは言葉を詰まらせる。反論しようとしたが、彼女にそんな暇を与えずにアリアは言葉を続ける。


「あんな大荷物、一人で抱えさせられてる時点で大体どんな関係かなんて分かるわよねぇ。使用人扱い? それとも奴隷かしら?」


「そんな、ことは……」


言葉の途切れたシャールを見遣りながら、小さく息を吐いてからアリアは口を開く。


「———ま、アンタらの関係なんてどうでも良いんだけどね。無駄なことしてるなーって」


「無駄なんかじゃないです! 死んだ人だって、ちゃんと弔わないと……仲間だったのなら尚更……!」


シャールは思わず叫んだ後に、正気に戻って口元を押さえる。アリアはそんな彼女を冷たい目で見て、そして肩を竦める。


「そ、まあ価値観の違いかしら。アンタがそうしたいなら好きにすれば良いの、私には関係ないから」


そう言ってアリアはくるりとシャールに背を向けて、また歩き出す。そんな彼女の背中を見ながらシャールはぽつりとこぼすように言う。


「——そう、ですよね」


そう価値観の違いだ。価値観が違うのだ、自分と彼女たちでは。先ほどの広間でのやり取りで、不覚にもこの2人に覚えていた親近感のようなモノが冷たくなっていくのをシャールは感じた。

そうだ、何を今更。エリオスはもちろんのこと、彼の「ご主人様」であるアリアだって、普通(私たち)とは違う悪役(ヴィラン)の価値観を持っている——そんなこと、自明だったろうに。

そんなことを思いながら、シャールはアリアの後をとぼとぼと歩く。


「壊れてるのかしらね。アンタも」


自分にしか聞こえない声で、アリアはぽつりと呟いた。

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