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Ep.6-14

「もう一度言いましょうか? 彼——ルーアン統制局長は私の天敵、私にとって何よりも排除したい邪魔者なのです」


ユーラリアは追撃するようにシャールたちの視線を一身に受けながらそう言った。

そんな彼女を嗜めるように、レイチェルは溜息を吐く。


「猊下……彼女たちは教会の外の者たちなのですよ。軽々にそのようなことを……」


「あら。でもこれから先は互いに命を預けるのですよ? そういう関係になるのなら、お互い隠し事なんて無い方がいいのでは? 市井の物語などではよくそういう展開もありますよね?」


「物語は物語です……とはいえ、もう色々手遅れなのでこれ以上言っても……ですね」


レイチェルの諦めたような言葉に、ユーラリアは満足げに頷く。そしてエリオスたちの方に視線を向けながら、楽しげに話し始める。


「エリオス・カルヴェリウス——貴方が連名勅令に関するいざこざを知っているのなら、ここにいる多くの者は我ら祭儀神託官と教義聖典官の対立は知っていることでしょう。もとより我らは対立があったのですけれども、私の就任後から対立が深まりましてね——まあ、喧嘩をふっかけたのはこちらなのですが」


「猊下……言葉遣いが」


嗜めるレイチェルの言葉にぺろりと小さく舌を出して応じるユーラリア。


「あら失礼。でも私的な晩餐会の席での言葉ですもの。少しくらいハメを外させて下さいな」


『ハメを外した』彼女の振る舞いに、シャールやリリスは驚いたような顔を見せる。エリオスも、呆れたような表情で苦笑混じりにレイチェルとユーラリアのやりとりを見ている。

そういえば、以前エリシアから聞いたユーラリアの姿というのは、かなり破天荒な印象を受けた。神殿で会った時はその威厳ある姿に忘れていたけれど、なるほどこれが彼女の本来の姿なのだろう。非常にのびのびとした、闊達そうな笑顔は玉座にいたときの彼女と同じ人格だとは思えない。

ユーラリアはくすくすと口元に手を当てながら、話を続ける。


「私は最高巫司に就任してからこれまで、聖教会という組織の改革を進めようとしてきました。同じ教会内の組織でいがみ合い、それに民草を巻き込むことすらあるだなんて三流もいいところですもの——でも、私の望む聖教国の姿は祭儀神託官と教義聖典官の垣根の無い組織。これは既得権益への執着や割拠主義(セクショナリズム)が強い教会官僚たちにはあまり受けが悪いのです」


「——その反対派の筆頭が、統制局長」


エリオスがユーラリアの言葉を継ぐようにそう言うと、彼女は満足げに頷いた。


「表向きは伝統やら聖典の記述やらを根拠に反論してくるのですけどね……裏ではずいぶんと私を失脚させるべく動いてらっしゃるようで。ふふ、ちょこまかと本当に鬱陶しい」


刺々しい物言いに比して、ユーラリアの表情は穏やかだった。口ぶりほどに感情の昂りが無いだけなのか、あるいはもう慣れてしまっているのか。シャールにはそれを判ずることはできなかった。

そんな彼女に、エリオスは目を細めて舐るような視線を向けて問いかける。


「なるほど、君はそんな君自身の願望のために魔王という存在を利用したわけだ」


エリオスはそう言って口の端を意地悪く釣り上げた。

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