表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
420/638

Ep.6-9

「君……何故こんなところに……」


突然現れたリリスに、エリオスは驚いたようにそう零した。リリスはそんな彼に対して得意げな顔を浮かべてみせる。

エリオスを驚かせられたことに、愉悦を感じているのだろう。リリスは饒舌に語りだす。


「あら、私もともと魔王を倒すための旅路の一員でしたのよ? 私がここにいるのはそう不自然では無いのでは? それに——」


そこで言葉を切ると、リリスはそっとシャールの身体に腕を絡めて彼女を抱き寄せる。


「私の大切な友人からのお願い、ですものね」


そう言ってリリスはぺろりと舌を出してみせる。そんな彼女にエリオスは引きつったような笑いを浮かべる。


「なるほどねぇ……君の差し金だったってワケか、シャール」


エリオスの言葉に、シャールは黙したまま頷く。

以前、レイチェル卿とザロアスタ卿がエリオスの館を訪れ、そして聖教国へと去るときにシャールが密かに耳打ちした『お願い』。それこそが、旅立ったリリスを探して、対魔王の戦線に加えることだった。

彼女の力は必ずや魔王との戦いで、大いに役に立ってくれる。そしてその先の戦いでも——シャールはそう確信しているが故に、レイチェルにその願いを託した。

かくして、レイチェルは見事にその願いに応えてくれたのだった。


「聖教国の聖騎士が訪ねてきたときは流石に驚きましたわ。それでも、他でも無いシャールのお願いですし、かつてルカント様と共に魔王討伐を誓った身ですもの、参戦しない理由はありませんわ」


そう言い切る彼女の顔は力強く、そしてこれまで見たどんな彼女の姿よりも美しかった。

あの日、別れてからここまでの時間の中で彼女はとても強くなったのだと、そう感じられてシャールは心地よいくすぐったさを覚える。

そんな二人を見ながら、エリオスは眉間に皺を寄せながらも、意地の悪い笑みを口の端に浮かべる。


「君はシャールと共に私を倒すとあの日言っていなかったかな? それなのに、憎い憎い仇である私と共闘なんてして死んだ仲間に恥ずかしくは無いのかい?」


心を削り抉らんとする言葉。シャールはその言葉に、思わず声をあげようとしたが、リリスがそれを遮った。


「烏滸がましいですわね。エリオス・カルヴェリウス——それとも能天気なのかしら?」


「は?」


「『共闘』だなんて、見当違いもいいところですわ。他の方々はどう思っているかは知りませんけれど、私にとって今の貴方は魔王討伐のための『道具』に過ぎませんわ」


「——ッ!」


リリスの切れ味の鋭い言葉に、エリオスは思わず言葉を詰まらせる。そんな彼に追撃するように、リリスは続ける。


「つまり貴方と私の関係は『共闘』なんて血の通ったモノではなく、互いに『利用』しあう関係——貴方を良いように利用出来たのなら、ルカント様やアグナッツォ、ミリアの溜飲も下がるというモノでは?」


「君、言うようなったねぇ……全く、アリアを連れてこなくて良かった。また、笑われるところだった……」


口の端をひくつかせながらエリオスはそうこぼす。そんな二人の剣呑な空気を裂くように、パチパチと緩い拍手が響く。


「いやぁ、エリオスくんがそんなにやり込められてるところを見れるなんてね。あは、やっぱり再会のシチュエーションを整えた意味はあったねぇ」


「エリシア……」


エリオスは玉座の下手の扉から手を打ち鳴らしながら現れたエリシアを見て唇を尖らせる。そんな彼の表情をにんまりと笑いながら見つめるエリシアは、玉座の前の騎士たちに目配せをする。

すると、騎士たちは姿勢を正して直立し、大きく息を吸って口を開く。


「列席者各位、静粛に! これより、世界で最も権威ある御方、我らが神の当代唯一の代理人——アヴェスト聖教会最高巫司猊下の御成である!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ