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Intld.IV-xiii

「魔王、討伐——!」


ザロアスタの言葉にシャールとエリシアは思わず息を呑んだ。エリオスも腕を組んだままだったが、眉の端をぴくりと動かして反応する。そんな彼らを見ながら、ザロアスタは言葉を続ける。


「そうだ。いよいよ最高巫司猊下による魔王討伐軍編成も完了し、作戦展開等についても定まった。統制局長も最高巫司による作戦案を承諾し、正式に聖教国として打って出ることができるようになったのだ」


自慢げに、誇らしげに語るザロアスタにエリオスがふと問いを投げる。


「兵はどれくらいなのかな?」


「――む?」


エリオスの問いかけに、ザロアスタは不思議そうな顔をする。そんな彼に、エリオスはわずかに苛立ったような表情を浮かべる。


「——何だいその顔は……」


「いや何、其方が兵力を気にするとは思っていなかったものでな……ほら、其方はアレだろう。自分の力だけで降りかかる火の粉は叩き落とす性格であろう?」


そんなザロアスタの言葉に、エリオスはひどく不機嫌そうな表情を浮かべる。その表情には性格についてザロアスタにだけはとやかく言われたくないというような不満と遺憾の意が滲み出ていた。


「——たとえそうだったとしても、これは戦争なんだから……兵力くらいは気にする。大体相手は将官から雑兵に至るまで皆、暗黒大陸の魔物なんだ。ただの人間とは訳が違う——ただの人間相手ならば私はいくらでも無傷で相手できるだろうさ。でも、魔物となれば私だってどれだけ対応しきれるかは分からない。露払いが居なくなって雑兵に囲まれれば、いくら私でも……ね」


彼の言葉に、その場の空気が重くなる。シャールはかつてルカントたちとの旅の中で「魔物」と呼ばれる存在を見たことは何度かある。あの時のシャールには戦う力なんて無くて、もっぱらルカントたちが戦う様を見ているだけだったけれど、確かにあれは弱いものでも人間の兵士何人分にも相当しかねない強さがあった。あんなモノたちと自分はこれから刃を交えるのか——それも、何体も。

今更ながらにシャールは自分がとんでもない舞台へと足を踏み入れつつあることを実感した。

そんな空気の中、ザロアスタは軽く咳払いをする。


「――まあ意図は分かった。では具体的な兵力についてだが、まず聖教会。祭儀神託官からはレイチェル卿率いる神殿騎士団および神殿衛士、その数約三千。次いで教義聖典官からは我が異端訴追騎士団および異端審問局付兵団から五千、現在大陸北部にて魔王軍の進行を押しとどめている北方警備軍の約半数の二万、他魔術師団など二千ほど。そして大陸各国政府から最高巫司猊下と統制局長による連名勅令にて徴発した軍勢が合計で五万、その他民草からの有志たる義勇軍と傭兵団が合わせて三万程だ」


「だいたい十万人ってところか。露払いか肉の壁程度にはなるといいけど」


「――エリオス」


エリオスの冷淡な言葉に、シャールは思わず語気を荒くしてしまう。エリオスはそんな彼女の反応に冷ややかな笑みを浮かべる。

そんな二人の剣呑な空気の中、ザロアスタは肩を竦めつつ話を続ける。


「確かに数としてはまあ拮抗できるかどうか、というのが実際だ。だが、数だけでは測れん戦力が此度はそろっている――今回は大陸の東端にある魔術王国メルリアも最高戦力たる王立魔術兵団の半分を派兵してくれている。何より、聖剣が四本も揃っているからな」


「四本? 三本の間違いだろう?」


エリオスは怪訝そうに眉を顰める。そんな彼の言葉を、ザロアスタはどこか得意げに鼻で笑う。


「いいや、四本だ。そこなシャールのアメルタート、エリシアのヴァイスト、レイチェル卿のシャスール。そして、最高巫司猊下のマナフ。これが当世の魔王に突き立てる神の牙よ」

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