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Intld.Ⅳ-ⅸ

「君の勘違いは二つ。一つはこの私を騙せるなどと思ったこと。もう一つは、私が君を()()にきたと思っていることだ」


エリオスの言葉の意味が村長には分からなかった。それよりも目の前に転がる従妹の生首、それを平然と放り投げた少年——この状況への恐怖と混乱が彼の思考を埋め尽くしていた。

そんな彼の様子に苦笑を漏らしながら、エリオスはゆったりとへたり込んだ村長の周りを歩き始め、そして言葉を続ける。


「君はまだ、自分が生き延びる道があると思っている。いくらでも挽回の余地があると思っている。それは単に、今この場が裁きの場——君への処遇を決定する場であり、君には抗弁の権利があると思っているからに他ならない」


その言葉の一音一音には毒と怒りと呪詛が込められているようで、村長は自分の首がゆっくりと締め上げられているような錯覚に陥る。


「違う違う違うんだよ……もはや裁きなんて段階じゃあないんだ。審理は終了し、心象形成も量刑判断も決まっている。残すのは宣告と執行だけ。今君はそういう段階にいるんだ——言ってる意味が分からないかな? ああ、そういえば君たちの知ってる裁判と私が知っているソレは違うのかもね。では分かりやすく言い直そうか」


そう言いながらエリオスは村長の目の前にしゃがみ込み、にっこりと笑いながら視線を合わせる。そして告げる。


「君は今からこの場で私に無惨に殺されて死にます。もうお終いです」


「ひ、ひぃぃぃッ!? ま、待て、待ってくれ!」


「待ちません。結論は既に出ていて情状酌量の余地も何もない。刑の加重事由ならあるけどね——例えば、シャールの家を燃やすのを扇動していたのは君だとか」


「——ッ!」


エリオスの言葉に村長は青ざめる。


「村が貧しくなっていく、状況の打開がいつまでもできないことへの責任が自分に向くのを恐れたのかな? もともと、レブランクの崩壊に一枚噛んでいて嫌われてしまっていたシャールの大切なものを贄として、自分に向くかもしれなかった不満を発散させたかったんだよねぇ? あ、もしかしたらその時彼女の家にあった財産もくすねたりしてた? ふふ、その表情は図星だね? とんだ悪党だ。私ですら呆れるほどにね」


つらつらと語るエリオスに村長は、陸にあげられた魚のように口をパクパクさせるしかなかった。


「さあ、ここまで説明してあげたんだ。もう生への諦めもついただろう? そろそろ終わりにしよう」


「ま、待て……待って……え、エリシア……エリシア……!」


村長はその名前を喚き散らしながらエリシアの方を振り返る。そしてその足元に縋りつきながら彼女の顔を見上げる。


「た、助けてくれ……き、君は……ゆ、勇者だろ? こんな、正当な……手続きも踏まない……こんな私刑が……許されていいはずが……! き、君は勇者なら……止める、べきだろう!?」


「——だってさ、どうする? エリシア。君も私の邪魔をしてみる?」


エリオスがゆらりと睨め付けるようにエリシアを見上げた。エリシアは表情を歪めながらも、抜いていた聖剣に力を込める。

その瞬間、エリオスは僅かに身構える。しかし——

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