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Intld.IV-vii

「――し、仕方なかった……仕方なかったんだ……」


村長に残された選択肢はただ一つだった。もはや罪は暴かれている、罰は免れない。ならばできることは、ただ減刑を乞うしかもはややれることは無い。もはやこの期に及んで名誉や体面など気にしてはいられまい。


「――最初は断ったんだ……村民たちを裏切れないと、でもやつらは、協力しなければ殺すと言われて……レブランクが崩壊したせいで、誰に頼ることもできなくて……」


「――ッ!」


エリシアが思わず息を呑んだ。

――やはり、「レブランクの崩壊」はエリシアにとっての弱点だ。これを出すことは、彼女が大事に思っているシャールのことを想起させる。彼女がその一端を担っているというレブランクの崩壊を原因として挙げれば、彼女はもうそれ以上責め立てることはできない。なぜなら、それを追求し責め立てることは、彼女の中ではシャールのことを責め立てるのに等しい。

彼女の強張った表情を見ながら、村長はこの先の道筋を思案する。このままいけば彼女は同情と葛藤から、自分を裁くことはできなくなるだろう。そうしたら、後は自分で「この村から出ていく」とでも言えば、それ以上の追求は受けない。獄に繋がれることも死罪になることもない。地位も財産も失うけれど、それはそれだ。この乱れた国でならいくらでも生きていける――


「く、あはは」


思考を巡らし、この先を夢想する村長の耳に乾いた笑い声が飛び込んでくる。その笑い声に、村長は反射的に振り返る。その視線の先ではエリオスが笑っていた。


「――な、なんですか……」


「いやいやいや。はは、君はどうやらひどい勘違いをしているようだと思ってね。思わず笑いが込み上げてしまった」


「か、勘違い……?」


復唱する彼の目の前に、エリオスは何か黒く重いモノを彼の目の前に放り投げる。部屋の絨毯を汚しながらごろごろと転がるそれは、村長の目の前で動きを止める。そしてようやく村長はソレが何かを理解して、叫ぶ。


「え……エヴァ!」


彼の目の前に転がっていたのは、村長の従妹にしてこの村唯一の宿屋の女主人エヴァの頭部だった。それを見た瞬間に、村長だけでなくエリシアさえもが表情を歪める。


「――アリキーノの記憶だけでは読み取れない事実は彼女が全部教えてくれた。その軽い口と、その命でね」


エリオスは口元に微笑を浮かべたまま、ゆっくりと村長の目の前まで歩み寄る。そんな彼に怯えた村長は後ずさることもできずにその場に崩れ落ちる。

そんな彼にエリオスは続ける。


「彼女は教えてくれたよ。君が嬉々として盗賊との取引について語っていたと。そして彼女も、小遣い稼ぎの一環として君に情報と客を売っていたとね。しかも、君の要請で村を襲撃するときには盗賊たちに宿の地下室を拠点として貸して、さらに利益を得ていたというじゃあないか。いやはやその商魂逞しさ、恐れ入るよ」


村長の顔がみるみる青ざめていく。何もかも、何もかもこの男に潰されていく。なんだ、何なんだ。

そんな絶望の色を濃く顔に浮かべた村長に、エリオスは冷たく告げる。


「君の勘違いは二つ。一つはこの私を騙せるなどと思ったこと。もう一つは、私が君を()()にきたと思っていることだ」

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