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Intld.IV-v

「は、ははは。な、何の話ですかな? というかリドルさん、なぜ貴方が私の家に?」


暗い部屋の中でエリオスと向かい合いながら、村長は乾いた笑い声をあげて彼を迎え入れんとするように両手を広げる。そんな彼に皮肉っぽい笑みを浮かべて口を開く。


「なぜって? あは、面白いこと言うね。分かり切ったコトを聞くのは、もしかして私が何もわかってない愚か者だと思っているからかな?」


「な、何を言っているのか皆目見当もつきませんな……それより、勝手に家に入ってこられては困りますよ。今この村には何人か聖教会の異端訴追騎士がいるのです、このままここから出て行かないのなら、彼らに通報してもいいのですよ? 彼らとて、民からの求めがあれば不法に他者の家に上がり込むものを放ってはおきますまい」


「——いいよ、やれるものならやってごらん? そんなことになって君が困らないならね」


「——ッ!」


エリオスの言葉に村長は息を呑む。全てバレている? つうっと額に汗が流れる。


「わ、私がなぜ困るというんですか? 異端訴追騎士に咎められるようなことは私には……」


「無い? 本当に?」


エリオスの声は嗜虐的で、村長の精神を、冷静さを削り落としていくようだった。そんな彼の言葉に村長の唇はぶるぶると震え出し、歯の根が噛み合わなくなってくる。


「——も、もちろ……」


「ふむ、意外に強情だねぇ。まあいいや、あんまり君に時間をかける気もないしね。私が何故ここにきたのか——それは盗賊騒動の元凶を片付けに来たんだよ」


そう言ってエリオスは微笑むとゆらりと部屋の中へと一歩を踏み出す。そんな彼の歩みに反射するように、村長は後ずさる。


「げ、げんきょう……元凶ですって? だ、誰の——」


「『誰のことですか』とかつまらない台詞はよしてくれよ村長。あんまり分かりきったことを何度も問われると流石にイラついてくる。元々私は今、こう見えても腸が煮え繰り返りそうなんだ。うっかり何をしてしまうか分かったものじゃない」


その言葉の通り、エリオスの口元は笑ってはいるもののその瞳は真っ直ぐに、貫くように村長を見つめている。その視線はまるで焼けた鉄の杭のようで、村長は心臓を焼かれるかのような恐怖と焦燥に襲われる。

そんな彼に、エリオスは小さくため息を吐き、そして告げる。


「では結論を。盗賊たちのこの村への侵入、そして略奪。全て君が手引きしていたことなのだろう? 村長。村の警備についての指揮を執るのも当然君だったろうし、警戒の薄いところや弱点も知り尽くしていたはずだ。この村は何度も襲われ、村人たちはその度に抵抗していた。それなのに、盗賊たちの一人すら捕虜にすることができず、ただただ後手に回ってしまっていたのはそれが原因だろうさ」


「——ッ!」


「そして、私とアリア——私のツレが襲われたのも、君の手引きがあってこそだ。君は村の宿に宿泊する旅人たちについて、盗賊たちに知らせ彼らの仕事に協力した。旅人なら、いなくなっても誰も知らないうちに出立したことにしてしまえば問題にはならないからね。違うかい?」


エリオスのつらつらとした糾問に、村長は息を荒くする。しかし、すぐに呼吸を整えるとぎろりとエリオスを睨みつける。


「し、失礼な! わ、私が村民たちを売ったとでも言うのか! な、何を根拠に……大体、ただの旅人たる貴方が何を言ったところで……」


「じゃあ例えば、『聖剣の勇者』がそう言ったとしても?」


「——ッ!」


高い声が響いた。それと同時に、暗かった部屋が不意に明るくなる。窓が開け放たれ、カーテンが風に靡いて陽の光が差し込む。

正午の光を背に、窓からするりと猫のように部屋に入り込む人影。彼女は窓をぱたんと閉めると再びカーテンを閉め切る。

部屋に入り込んだ彼女に、エリオスはくすりと微笑みかける。


「これ以上お預けを食らわされたらどうしようかと思っていたよ。エリシア」

さきほどワクチン2回目接種してきました。その都合で、投稿時間等が著しく乱れる可能性がありますが(今更)、ご承知おきください。

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