Intld.IV-ii
エリオスたちの困惑に満ちた視線の先、教徒たちの集落の中心に立つザロアスタとシャール。彼らの周囲は戦闘の激しさを物語るように地形や建物が破壊されている。そしてそのそばでは数人の騎士たちがいそいそとうごきまわり、教徒たちを捕縛し連行したり、攫われ囚われていた村人たちを保護していた。
そんな状況に視線を走らせながらも、エリオスは状況を掴めずに叫ぶ。
「――なんで君が此処にいるんだ、ザロアスタ卿!」
そう叫んだエリオスの言葉にシャールは気まずそうな苦笑を浮かべる。彼女も全く同じことを思っているのだろう。対するザロアスタは、そんな彼らの反応にきょとんとした表情を浮かべる。
「えっと、それはボクの方から説明しようかな」
声がザロアスタの後ろから響く。彼の大きな身体の後ろからひょこりと顔を出したのはエリシアだった。エリシアはひょこひょこと彼の後ろから歩み出ながら、話始める。
「――もともとね、今回ディーテ村に来たのも、盗賊狩りを提案したのも事前にザロアスタ卿が率いる異端訴追騎士団がレブランクに来ているって聞いてたのもあって計画したものだったんだよね、うん」
「は? ――こほん、えっとどういうこと?」
エリシアの言葉に、エリオスは眉間にしわを寄せながら思わず威圧的な声を上げて、慌てて咳払いして問い直す。そんな彼の反応にエリシアは肩を竦めながら、明後日の方向を見遣る。
「いや、正直なところエリオス君が今回の遠征に乗ってくれるとは思っていなかったしぃ……何だったら、ボクら二人で大人数相手にする羽目になることも予想してたからね? 村の防衛とかにもし手を割けそうになかったら、最悪ザロアスタ卿に援護とか頼めばいいかぁ……みたいなことを考えていたわけなんだよ。ま、実際にはアリアちゃんを焚き付けて君を巻き込めた訳なんだけど」
「——ッ! 君は……!」
エリオスは思わず語気を荒げたが、すぐに小さく咳払いをする。
「……ううん、私が君に怒るような権利はない。原因はなんであれ、アリアが攫われたのはどこまでいっても私の責任だからね」
そういってエリオスはゆるゆるとかぶりを振った。そんな彼の反応に、エリシアは表情を曇らせながらも、一瞬歯を噛み締めてから、低く努めて穏やかな声を紡ぐ。
「アリアちゃんの件はあとで、ザロアスタ卿と一緒に聞かせてもらうね。残りの教徒たちの処遇を決めるうえでも必要な情報だし……何よりボクも受け止めたい」
そんな彼女の答えにエリオスは皮肉っぽい笑みを浮かべた。そんな彼の表情に目を細めながらエリシアは話を戻す。
「——最初の予定では、エリオス君たちが同行してくれることになったから、あえてこっちからザロアスタ卿には連絡しなかったんだけど、結局単なる盗賊退治じゃ済まなくなってきたし、人手も足りなくなってきたから、砦で君たちと別れた後にザロアスタ卿の異端訴追騎士団に応援を頼んだってワケ。結局のところ彼らの本業とも絡みのある話だったからね」
「応さ! そもそも、我輩たちは異端を捕らえるためにレブランクへと来たのだ。書陵局長の情報提供に基づいた統制局長命令でな。しかし驚いたぞ、最高巫司づてにエリシアもこちらに来ているとは聞いていたが、まさかここで話が繋がるとはな!」
愉し気に笑うザロアスタにエリオスはあきれた表情を浮かべる。そんな彼らの会話におずおずとしながらシャールは言葉を差し挟む。
「えっと……全部、解決したってことで良いんですか?」
そんな彼女の問いに、エリシアは一瞬表情を曇らせながらも、直ぐににこやかに笑って見せる。
「うん、全部解決したよ。アイリちゃんもアリアちゃんも助けられた。悪人たちは倒された。うん、間違いなく解決だよ」




