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Ep.5-132

「でもね、そんな見下げ果てた貴方だけど、私は一点だけ評価してるの」


アリアの言葉に教主も、そしてエリオスもぴくりと反応する。

エリオスは眉根を寄せながら、おずおずとアリアの耳元で尋ねる。


「——君、何を……まさかとは思うけど、君の正体を……?」


不安げにそう尋ねるエリオスに、アリアはにんまりと笑いながら目を細める。その瞳にはある種の自信と、それから愉悦の色が満ち溢れていた。

アリアはちらと流し目気味に教主を一瞥してから、エリオスに密やかに耳打ち。


「——大丈夫、これはコイツへ私が与える罰の一環。私から与える罰はこれで完成するの。その後はアンタに上げるから、安心なさい」


「……まあいいけど。君がそう言うなら」


エリオスはそう言って、ゆるゆるとかぶりを振る。そんな彼に微笑みながら、アリアは改めて教主の方へと向き直る。


「貴方の優れたところはね、その運命力とでもいうべき引きの良さ、そしてそれを掴み取る力ね。貴方は私のことを最高の素体だと言っていたわね、私も全くその通りだと思うわ」


「——な、何を……?」


「最高にして完璧――私という素体をそう評価した貴方の観察眼は褒めてあげるわ。だって私が『悪の女神』そのものなんだから」


アリアは口の端を妖艶に吊り上げながら、そう宣った。その言葉に、教主はびくりと全身を震わせ、困惑したように口をぱくぱくとさせる。


「き、君は……何を、何を言っているんだ! そ、そんな……そんなことあるわけ……」


「あら、ありえないって本当にそう思う? 禁書でしか知りえない『悪の女神』の知識をここまで開陳できている時点でおかしいって思わなかったのかしら?」


「――ッ! そんな、まさか君は本当に……?」


信じられないと言わんばかりに首を振りながらも、教主のその目は彼女の妖艶に輝く瞳に釘付けになっていた。彼は肘から先の無い手を伸ばしながら、唾を飛ばす。


「いや、いや! 信じられない! そんなこと……あるわけがない、君が……君が神だなんて……だとしたら、君はあのとき捕まっていた? 権能はどうしたんだ!? この世全ての悪を司る『悪の女神』であるのなら、その権能でここから逃げ出すことだって出来ただろう! そもそも何故そんな肉の殻をまとう!? 神とは高位の霊的存在、血肉でできた身体など持たないはずだろう!」


「あー、権能と身体ねぇ……まあ、その辺りは面倒なところではあるんだけど……」


言葉に詰まり、頬を掻くアリア。そんな彼女に目を細めながら、エリオスはパチリと指を鳴らす。その瞬間、幾つもの影が彼の足元から立ち現れて槍と化し、教主の首に殺到する。


「ひ——」


槍の切先が首の柔らかな肌に触れ、つぅと細い血の筋が滴る。教主は小さく息を漏らして、全身を縮こまらせる。その姿を鼻で笑いながらエリオスは告げる。


「それが彼女の権能だよ。今のは『憂鬱』の権能——人の思考に影を落とすという概念の具現、とでも言っておこうか」


「馬鹿な……例えそれが正しかったとして……何故、君が……一体君たちは何なんだよぉ……」


泣きそうな声でそううめいた教主を苦笑混じりに見下ろしながら、アリアは告げる。


「んー、やっぱりそこまで答えないと信じてもらえないか。まあいいわ、それなら教えてあげるわ。私の権能のこと、身体のこと、そしてコイツのこと」

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