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Ep.5-128

お仕置き回その一です

「やめろぉぉ! 来るなァァァ!」

「な、何なのよこれェッ!」


教徒たちの怯声が広間の中を反響する。そんな広間の中を幾本もの黒い腕が縦横無尽に駆け巡る。教徒たちはその腕をかいくぐり、或いはその腕に立ち向かいながら絶叫をあげていた。

ある教徒は腰に佩びていた鉄の剣で迫ってきた腕に斬りつける。しかし斬られた腕は血を吹き出すこともなく、斬られたままに二つに分かれたかと思うと、渦蟲(プラナリア)のように再生して二股に分かれて動き出す。


「な――!」


彼が驚いたのと同時に、片方の手は、彼の手から剣を奪い取りそれを彼の腹部に突き刺す。そしてもう一方は彼の首を掴みぎりぎりと締め上げる。


「ぐう……ぎいい、ががが……」


深々と剣で刺し貫か腹部、締め上げられ気道をつぶされる首。絶叫をあげることも命乞いをすることもできない。そんな中、彼に食らいついていた腕は不意に妙な力を入れる。首を掴んだ腕と、腹部を貫いた剣を握る腕が彼の身体をふわりと浮かび上がらせると、互いに逆方向に彼の身体を引っ張る。


「ぎ、ぎぎぎがが――や、やめ、ち、ちぎれ……ぎゃ――」


次の瞬間、彼の身体が中空で真っ二つに千切れた。ぐちゃぐちゃと血や肉や臓物が床に零れ落ちる。黒い腕は未だにわずかに意識の残る彼の上体を本体の口の一つへと運ぶ。奥歯と奥歯の間にその半分になった彼の身体を置くと、じわじわと顎が閉められて最後にはくしゃりと押しつぶされる。

その最後の瞬間に、口から覗いていた彼の顔は純粋なまでの絶望の色に塗りつぶされていた。

そんな彼の顛末を見て、エリオスは小さく歎息する。


「へえ……さっきはあんな風に弄ぶみたいなことしなかったのに……ただ喰らうだけの代物だったはずだけど。私の感情をなぞって行動を変えているのかな?」


「さっきって……アンタこれ、今回が初めてじゃないの?」


「ん? ああ、君をさらった盗賊連中がね。命知らずにも私まで攫おうとしていたからね。ちょっとばかり実験台にね。君にお披露目する前の予行練習って奴さ」


「――予行練習してまで見せるような代物かしら、コレ」


朗らかに言い放って笑うエリオスに、アリアは苦笑を漏らす。

そんな中でも、殺戮の宴は続く。

魔術を使って腕を焼き払おうとした若い女はその四肢を黒い腕に抑えられて、両眼を抉られ口の中に腕をねじ込まれながら臓物をかき回されながら全身から血を噴出させる。

逃げ惑っていた男は、足を掴まれて空中に放り投げられ、キャッチボールのように空中で弄ばれながら全身がみるみるうちにぐちゃぐちゃになっていく。

祈りの言葉を口にして跪く老人は口の中に放り込まれてしたと前歯で全身を弄ばれ、神に助けを請いながら死んでいく。

みるみるうちに教徒たちは減っていき、五分も経たないうちにエリオスとアリア以外、五体満足な人影は無くなってしまった。

欠損し、虫の息となった教徒たちに飽きたのだろうか。黒い腕は、もはや弄ぶのをやめて生き残っている者たちを次々に口へと放り込んでいく。

そしてついに、広間はエリオスとアリア、そして腕を失い倒れ伏した教主だけの空間になった。エリオスは祭壇からひょいと降りると、アリアの手を取り彼女を祭壇から降ろす。そして荒れた息を零す教主の身体を掴むと、雑に祭壇の上に放り投げる。

「うぐ」と低く小さな悲鳴をあげる教主に、エリオスは冷たい瞳を向ける。そして、もはや笑みすら浮かべることなく吐き捨てるように言った。


「さて、フィナーレといこう。当然だけど、君は楽には殺さない。最後の一刹那までその人生も精神も命も、ありとあらゆるモノを玩弄しつくして殺してあげる」


教主の眼には、もはや天井の神の姿は見えず――黒く悍ましい怪物が映っていた。

次回、お仕置き回その二(予定)

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