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Intld.I-i

“Interlude”は幕間、の意味で略語は”Intld”らしいです。初耳。

幕間なのでナンバリングは少しイレギュラーです。

厚いモスグリーンのカーテンの隙間から日の光が差し込む部屋の中、シャールは静かに、石像のように佇んでいた。


あのとき、(エリオス)の前に膝をついてから今に至るまでの流れを、簡単に振り返ってみよう。あのあと、エリオスから申しつけられたのは、館の「掃除」だった———いや、あえてぼかす必要もあるまい。より正確に言ってしまえば、捨て置かれた死体、すなわちルカントとアグナッツォの遺骸、そしてミリアの死に様に飛び散った血や体液、肉片の始末。



§ § §



「仲間が汚した館の後始末くらいつけてくれたまえ」


エリオスはそう言って、大広間にシャールを残してそそくさと消えてしまった。

ある意味で、その申し付けはシャールにとっては拍子抜け、という気持ちが大きかった。

最悪の場合、すぐさま凄惨な人体実験が行われ、四肢を切り刻まれ脳髄を引き摺り出される——それでいて苦悶の中で生かされ続ける———ことまでシャールは覚悟していたのだ。それを考えると単なる使用人——あるいは奴隷かもしれないが——程度の扱いをされたことは拍子抜けであった。


だが一方で、仲間の死に様の後始末というのは、それはそれでしんどいものであった。

最初に手をつけたのはルカントの遺骸。骨太な彼の、芯の通った肉体は、仮令たとえ上半身を失っても今なお両の足で広間の絨毯を踏みしめて立ち尽くしていた。

正直、これ以上彼の残骸を見ていたくはなかった。できることなら布でもかけて早く運び出し、土にでも埋めるか火にかけて目の前から消してしまいたかった。しかし、シャールはそれを自分に許すことはできなかった。

シャールは胃の奥から込み上げそうになるものを何とか押さえ込んで、ルカントの遺骸———その傷口を観察する。

ルカントの身体は腰の骨盤の少し上から、消え失せていた。飛び出た内臓や、その内容物に顔を歪めながらシャールはその傷跡をじっと見つめる。

ぼろぼろでところどころが歪。それはどこか咬み傷のようにも見えた———巨大な獣が、一口で身体を喰い千切ったような跡だった。


一通り観察しおえると、シャールは今なお立ち尽くすルカントの遺体の前に跪き目を閉じる。


「ルカント様、ごめんなさい——でも、必ず私は役目を果たしますから。いつかこの聖剣で、あいつに一矢報いて見せますから———だから、もうお休みになってください」


呟くように、祈るようにシャールはそう言った。厳しい人だった、優しかったとはお世辞にも言えない。それでも、まっすぐで自分の役目に忠実な人だった。そんな彼の姿に、シャールはきっと「畏敬」という感情を抱いていたのだと思う。

ふと、顔を上げるといつのまにかルカントの遺骸は床の上に倒れていた。心なしか、脚に最後まで込められていた力が抜けているように見えた気がした。

そういえば累計PV数が10,000越えていました。皆様ありがとうございます!


明日から少し更新頻度は落ちますが、episode3以降のプロットもできつつあるのでご期待頂ければ!


毎度のお目汚しにはなりますが、お気に召された方は評価、感想等いただけましたら励みになります!

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